日本たべもの総覧
日本たべもの総覧(9)
半片【はんぺん】
かまぼこと同じく魚のすり肉(身)に大和芋を摺り下ろしたものやデンプンを加えて作るが、かまぼこよりはるかに柔らかい。名の由来は駿河の人”半平”が創始したのでハンペイと呼ばれたのが訛ったとか、蓋半分に肉をはかって半円形にするため、半片と呼んだともいう。ちなみに昔は半月形が主であったが、のち角形に変わったといわれている。
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竹輪【ちくわ】
今の「かまぼこ」はもともと「ちくわ」の形であったが、のちに半分に切って板につけたものを「半片=はんぺん」と名付けたところ、もっと柔らかく作ったものを半片と呼ぶようになったため「かまぼこ」と称した。そこでもとの形は竹の輪に似ているとして「ちくわ」と称するようになったという。切り口が竹の輪に似ているからともいわれる。焼きちくわが主であるが蒸したものもある。
天麩羅【てんぷら】
エビ・アナゴ・貝柱などにゆるく溶いた小麦粉を衣としてつけ油で揚げたもの。京阪で生まれた調理法であるが江戸で大いに発達した。江戸湾の新鮮な小魚が豊富だったからであろう。なお江戸では野菜の揚げたものは揚げ物と呼んで区別した。また小麦粉代わりにそば粉を用いた「金ぷら」も考案された。卵黄を加えた衣で揚げたものもいう。天ぷらの語源には諸説があり、山東京伝によると大阪から江戸へ駆け落ちをしてきた男が天ぷら屋を始める際命名を頼まれ、「天竺(じ)」浪人がふらっとやってきて始めたので天ぷらと名付けたという。ポルトガル語で調理を意味する「テンペロ」、または天上の日(獣肉は食べず魚・卵を食べる日)のスペイン語、イタリア語の「テンポラ」に由来するといわれる。またあぶらを「天麩羅」と書いたのを音読みしたという説もある。
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豆腐【とうふ】
2000年ほど昔、中国で創始されたものといい、日本に渡来して大いに発達した。津々浦々に至るまで豆腐屋のないところはなく、また極めて安価であった。製法は簡単で水に漬けた大豆を挽いて煮立て、布漉ししてカスを取り去った豆乳にニガリを加えて固めたものである。ニガリは今日では一般に塩化マグネシウムを用いている。
湯豆腐【ゆどうふ】
もっともよく知られる豆腐の調理法で鍋を使った冬向きの料理。鍋に煮出し昆布を敷き、豆腐を茹でるかタラなどを好みで入れ、葱等の薬味を入れた付け醤油やポン酢醤油で食べる。付け醤油には酒を少々加え、容器ごと鍋の中で温めるのが一般的である。塩をひとつまみ入れると豆腐にスが入らない。
奴豆腐【やっこどうふ】
冷や奴ともいう。冷水や氷とともに鉢に入れた四角に切った豆腐を付け醤油で食べる。奴は「家っこ」の意で、江戸時代に武家に雇われていた下僕のことで槍や挟み箱などを持って主人のお供をした。この奴が着た着物につける「釘抜き」という紋が四角いもので切った豆腐に似ていたことから。奴凧にも方形の紋がよく描かれている。
参考資料「日本たべもの百科」新人物往来社刊