調理師日誌

2018年10月創立二十五周年記念号編集後記

 『永朋』創立二十五周年記念号は、名誉顧問の堺屋太一先生はじめ特別賛助店、業界団体、特別客員の皆様より寄せられましたご丁重なる「祝辞」と「永朋ニュースで辿る二十五年間の歩み」をダイジェストし、時系列による永朋舎の活動の歴史を記録しました。

 またトップを飾るにふさわしい口絵の料理写真は、「画竜点晴」をテーマにした卓袱料理と卓越した五人のメンバーによる「五節供」の会席料理を特集しました。

 五節供と伝承料理としての日本料理は切っても切れない関係にあります。日本の食文化を代表する日本料理は今やユネスコの無形文化遺産に登録された日本食として、世界中に普及しつつあります。

 平成六年の創刊号から数えて今月で293号となりました。このように一度も欠けることなく継続して発行できましたのもひとえに会員は元より、賛助会員並びに友好商社の皆様のご支援ご協力の賜物と深く感謝申し上げます。今後におきましてもインターネット全盛の時代とはいえ、会員相互のコミュニケーションを図り、切磋琢磨し、技術技能の向上、献立作成、情報公開等を通して、人格の形成等に役立つ内容を心がけたいと思います。

 錦秋の訪れとともに今年も残すところに2ヵ月あまりとなりました。夏から秋にかけて日本列島は西の集中豪雨や北海道地震、縦断する猛烈台風に悩まされました。風評被害の観光地を含む外食産業、農業にとって長引く悪天候は死活問題です。この度の災害により避難生活を余儀なくされている被災地の皆さん間には一日も早い復旧・復興を願ってやみません。

編集長 富田正藤

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2018年9月号編集後記

 「天高く馬肥ゆる秋」は空が高く感じられるほどに澄みわたり、馬も肥えるような収穫の秋。秋の季節のすばらしさを言う(広辞苑)とありますが、中国の故事では「秋高塞馬肥=秋高く馬肥ゆ」として「隣国匈奴(蒙古民族)が意気上がり、国境から侵入する季節なので警戒すべき兆候である」という意味合いが強いようです。

 防災月間(9月)ともなれば「天災は忘れたころにやってくる」という教訓がよく使われます。寺田寅彦(明治の物理学者)が残した言葉とされていますが、現代のように異常高温や台風、ゲリラ豪雨、地震等が頻繁に襲ってくると「忘れる間もなくやってくる」と言い換えたいくらいです。

 どのような被災地でも最も重宝がられるのがボランティア活動のようですが、残りの人生を奉仕活動に賭けるスーパーボランティア尾畠春夫さんがこの夏一躍脚光を浴びたのは、山口県周防大島町で起きた3日間行方不明だった2才の男児を数百人の捜索隊をよそに、たった20分で発見救助するという快挙によるものでした。感謝感激の一家にとって精一杯の御礼(食事や風呂)も丁重に辞退し、颯爽と立ち去る姿は武士道にも似て感動的でした。

 目下、東京の夜の観光で外国人にも人気の屋形船の需要が急増しているという。本会賛助会員でもある晴海屋では6船保有し、中でも定員144名、日本最大級の「白鷺」は圧巻です。2mの天井は背の高い外国人を想定し、接客用語も英語、中国語、韓国語に対応しているそうです。

 来月21日はいよいよ創立二十五周年記念式典となりますが、「永朋」も記念号の内容となります。

編集長 富田正藤

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2018年8月号編集後記

残暑お見舞い申し上げます

平成三十年 立秋
編集部一同

 昨年夏同様に異常気象が日本列島を覆っています。とりわけ7月23日に最高気温が埼玉県熊谷市によって41.1℃に更新され、昨年記録した高知県四万十市の40℃を塗り替えました。

体温でさえ40℃を越える高熱は危険であるのに体感温度はゆうに43~5℃。直射日光下の車の屋根は触れない位で車中は60℃を越えています。熱中症の救急搬送患者数は昨年同時期に比べて3倍にもふえているとか。家の中での熱中症もふえており、「心頭を滅却すれば火もまた涼し」などと我慢している場合ではありません。

避暑地の軽井沢では異変があり、避暑に訪れた客がすぐ引き返す傾向が見られ、これまではクーラーも不要だった快適な土地で電機屋さんがエアコンの取り付け作業に追われているといいます。

土用丑の日に鰻屋の暖簾をくぐれるゆとり世代はともかく、一般庶民が涼を求めて昔ながらのかき水屋やビヤガーデンで暑気払いをする光景には風情があり、お盆休みや夏休みに海、山、古里などへの墓参りも情緒があって良いものです。夜空を彩る花火大会や軒先での線香花火、浴衣姿の盆踊り、縁日の金魚掬いも親子連れの似合う夏の風物詩です。

編集長 富田正藤

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2018年7月号編集後記

 梅雨入り・梅雨明けは暦の上でいう場合と気象庁で宣言する場合とでは異なります。現代の日常生活ではもっぱら気象庁の発表により周知され、梅雨の期間は一般に夏至(今年は21日)を中心として二十日前後の雨期をさしています。

 梅雨明けは沖縄が最も早く、日本列島を北上しながら東北地方が最後に明けます。北海道には本州付近の梅雨前線が弱まるために梅雨がなく、十日間程度の長雨がある場合は蝦夷梅雨といいます。この時期の北海道は広大なラベンダー畑が青紫一色になり、梅雨時に多くの観光客が訪れる魅力の一つになつています。

 日本食の世界的な普及には目覚ましいものがあります。近年では中国に次ぐ人口十三億人のインドに日本食を出す店が増え、特に若者やファミリー向けに70店舗も数えるといわれます。

 これに輪を掛けるように、すでに海外10カ国に約800店舗を構える「牛丼の吉野家」が進出し、2020年までに100店舗を目指すという。人口の八割がヒンドゥー教徒のため牛肉は扱わず、イスラム教徒の豚肉も使わず、鶏肉をアレンジしたものやベジタリアン向けのメニューを開発中であるとか。外食産業も少子高齢化で人口が減少する一方の国内需要に見切りをつけ、海外に活路を見出しているのが現状です。

 ところで、あと2年後に迫った東京五輪に向けてインバウンドで激増する外国人観光客のための和食のもてなしも掛け声だけで終わらないようにしたいものですが、ホテル・旅館にとっては痛し痒しの問題が民泊です。住宅宿泊事業法が施行され、届け出をすれば異業種からの参入が可能になり、蓋を開ければ何百件程度で意外とハードルが高い。最も不安なのが闇民泊となりそうです。

編集長 富田正藤

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2018年6月号編集後記

 水無月(みなづき)は陰暦六月の古称ですが、一般に水の月の意といわれています。瑞穂の国にとっては田植えの後の最も水を必要とする時期で、梅雨前線が停滞し最も多く雨を降らせます。農事暦としては田植えも済み、田毎に水をたたえる月になります。一説には文字通り、梅雨が明けて水も涸れ尽きる月であるともいう。

 水無月という和菓子が京都の銘菓にあります。白黒の外郎(ういろう)の上に蜜漬けの小豆(大納言)を散らし、厚さ2cm弱に蒸し上げて三角に切ったものです。京都では6月になると一斉に売り出されます。6月30日の夏越しの祓えを中心に食べる季節の菓子ですが、日本料理でもその形に因んだ水無月豆腐などの料理名があります。

 この時季の蕨の根茎から取った澱粉(わらび粉)で作る本蕨餅や本くずで作る葛餅も黄粉(きなこ)をまぶして食べます。季節を問わず食べられている黄粉餅に類する銘菓はつきたての餅に黄粉をまぶす安倍川餅。また和菓子に不可欠の小豆あんをまんべんなく塗りつけたあんころ餅。代表的なものはお伊勢参りにつきものの赤福餅でしょう。

 伊勢参りの長旅でお腹を空かした参拝客に少しでも早く出せるように、餡を餅でくるむより素早くできるように考案されたといいます。本来は軽食として腹持ちの良い塩餡で作られたもので、今でも箸を添えて出されるのはその名残りといわれています。

 鮎漁の解禁とともに鮎料理が献立を彩る季節となります。一方ではまた、梅雨時は夏に向かって食中毒の原因となるサルモネラ菌などが発生しやすくなります。食材は勿論のこと庖丁や俎板、器具類も加熱処理が重要になります。念には念を入れて用心しましょう。

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