調理師日誌

2023年8月号編集後記

残暑お見舞い申し上げます

暦の上では立秋(今年は8月8日)になると暑中見舞いも残暑見舞いになります。今年の暑さは半端ではないようで、気象庁のデータによると7月の全国の平均気温が25.96度となり、19世紀末からの観測史上最も暑かった1978年をしのぐ45年ぶりの暑さになったという。

東京都の猛暑日(35度超え)が13日にもなり、熱中症で搬送される人も例年になく多く、また亡くなる人も少なくないようです。

この異常な猛暑は熱波となって世界各地を襲っており、国連の事務総長が「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が来た」と声明し話題になっています。北極の氷河が溶け、中国のウイグル自治区で52.2度を記録、ギリシャの熱波による山火事が発生するなど、ロシアによるウクライナの人為的な戦禍と相まって、猛烈な台風による豪雨や大洪水などが絶えない気象災害が地球を覆い尽すように起きています。

それもこれも地球温暖化による影響で、異常気象を引き起こす偏西風のリズムを狂わせているという専門家もいます。

さとふるなどのCMでお馴染みの「ふるさと納税」は、本来、都市から地方への税収移転が目的で始められたもので、年々寄付件数が増える傾向があり、総務省の公表によると昨年度の寄付額は過去最高を更新したという。

人気の返礼品は肉類、魚介類、果物類で、有名産地に偏る傾向があり、195億円でトップの宮崎県都城市は肉・焼酎がトップで、2位から4位までが北海道の市でカニ・イクラ・ホタテ・サーモン等となっています。寄付額の3割以下とする基準がありますが、物価高騰の折、先行き不安な地方も出てくるでしょう。古里は遠くにありて思うもので良いのではと思います。

編集長 日比野隆宏

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2023年7月号編集後記

鰻屋の職人は俗に「裂き三年、串打ち三年、焼き一生」(串打ち八年ともいう)といわれますが、日本料理や西洋料理、中国料理の調理師と異なり、専門職の寿司、天麩羅同様うなぎの場合も昔ながらに「職人」と呼ばれる「熟練した技術によって物を作ることを職業とする人」に分類され、とりわけ、職業ガイドによると「うなぎ料理店に勤務してうなぎをさばき、調理する調理従業者」となるようです。

一般に「職人かたぎ」という場合は「職人社会に特有の気質。自分の技術に自信を持ち、頑固だが実直であるというような性質」と解釈されています。

話はもどり、今年の7月30日は土用の丑の日になりますが、ゲリラ豪雨で被害を受ける地方もあれば、梅雨明け前なのに猛暑日が続いて熱中症になる人が絶えない日本列島です。江戸時代に、エレキテル(摩擦起電機)などを発明した平賀源内先生が、客入りが少なくて困っている鰻屋のために「本日土用丑の日」という看板を書いたら繁盛したといわれており、また、狂歌師で戯作者の蜀山人(大田南畝)が、土用に鰻を食べると食あたりしないという狂歌を書いたのが土用に鰻を食べる習慣になったともいわれます。

これが西洋人の話になると旧約聖書にモーゼの教えとして「ウナギはうろこのない魚なので食べるべからず」とあるため、今でも日本人のように好んで食べることはないようです。

調理法にもよりますが秘伝のタレで焼く「蒲焼」に優る料理はないと思います。それも関西風の地焼よりは蒸して焼いた関東風(昔は江戸前)の蒲焼(うな重)は垂涎の逸品。店の外で匂いをおかずにして飯を食べる小噺があるほどです。

夏を乗り切る格好のスタミナ食もさることながら、涼を求める夏の会席料理こそは私達が発揮できる職人技ではないでしょうか。

編集長 日比野隆宏

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2023年6月号編集後記

梅雨時ともなれば高温多湿の気候が続き、食中毒のシーズンとも言われています。集団食中毒のニュースも後を絶ちませんが、調理場においては食材も傷みやすくなるので食中毒の原因にもなります。

食中毒とは食品に起因する腹痛や下痢、嘔吐、発熱などの総称。原因によって症状は様々
で、主な原因はサルモネラ菌、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌等で、飲食により摂取した細菌が腸管内で増殖し、発症する場合と、食べ物の中で細菌が増殖してしまい、その食べ物を食することで発症する場合があります。一般に数日から2週間程度で回復します。

食中毒菌の種類は、細菌性、ウイルス性、自然毒(植物性・動物性)、化学物質性、寄生虫などで、中でも大多数を占めるのが細菌(バクテリア)とウイルスといわれています。特になまもの以外のもので、調理後に食品内で食中毒を起こすのも、細菌が原因で黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌(下痢・嘔吐型)等が知られています。冬場に多いノロウイルスはヒトの腸管のみで増加し、感染を拡大するとされています。

食中毒を予防するには一般に、手をきれいに洗うのが大原則で、調理を始める前、生の肉や魚、卵などを取り扱う前後、調理の途中で手洗いに行ったり、鼻をかんだりした後、動物に触れた後、食卓につく前、残った食品を扱う前等が注意事項に上げられています。徹底した衛生管理が求められる調理場では、生の肉や魚を切った庖丁や俎板、調理器具等の殺菌・消毒が予防のための必須条件です。調理を与る者として十分気をつけましょう。

梅雨入り前の異常気象や台風の影響で、梅雨前線が刺激されてすでに線状降水帯が発生し今年も各地で豪雨による被害が出ています。被災された皆様にお見舞い申し上げます。

編集長 日比野隆宏

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2023年5月号編集後記

百花繚乱の風光る光景が風薫る青葉若葉の景色に変わる5月は、和製語のゴールデンウィーク(文字通りの黄金週間)で始まります。移動性高気圧のせいで陽気はすでに初夏となり、一年で最も爽やかで過ごしやすい季節です。

旧暦では梅雨時にあたり、5月の長雨を五月雨(さみだれ)といい、梅雨(つゆ)の晴れ間を五月晴れと称していたそうで、今では五月(さつき)の空の晴れわたる好天をさすようになっています。新緑が映える野山でのアウトドアーライフも盛んになりますが、五月晴れは秋晴れほどは続かず、4月下旬から5月半ば頃までの間となるようです。

八十八夜は立春から数えて八十八夜目のことで、農家では八十八夜の別れ霜を目安に、昔から霜の心配がなくなるので夏野菜などの農作業を始める習慣がありました。暦の上では5月の2、3日(今年は2日)頃がその日にあたり、今ではもっぱら新茶の季節の代名詞になっています。

宇治・静岡・狭山等の茶どころでは昔ながらの「赤ねダスキ(襷)に菅の笠」の茶摘み歌の風情は見られなくなり、摘み取り機の音と風景に変わりました。一芯双葉の新芽を摘み、一番茶の高級茶が玉露で、摘む前に若芽におおいをかける方法が用いられます。新茶は一般に5、60度のお湯で3分おいて飲み、二番茶以降の煎茶は7、80度のお湯で1、2分おいて飲むのがベターとされています。最近は深蒸し茶が喜ばれているようです。

もともと日本で茶の栽培が始まったのは栄西禅師が建久2年(1192)中国から茶種をもたらし、明恵上人が京都栂尾に茶樹を植えたのが宇治茶の起源と言われており、当時は不老長寿の貴重な薬として貴族や高僧が飲用していたと記されています。

連休明けの5月8日から、新型コロナも季節性インフルエンザと同等の五類扱いとなります。緑茶のカテキンは細菌やウイルスへの効能が認められていますので、茶腹も一時と言わず毎日大いに飲用しましょう。

編集長 日比野隆宏

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2023年4月号編集後記

侍ジャパンがWBC(ワールド・ベースボールークラシック)2023で14年ぶり3度目の優勝を果たしました。準決勝ではメキシコと対戦、大不振村神様の奇跡の逆転サヨナラ打で驚異的な決勝進出を果たし、米国との決勝戦ではリアルニ刀流のスーパースター大谷翔平投手(エンゼルス)が1点差の9回、同僚の米国主将マイクートラウト外野手を空振り三振に打ち取って日本を世界一に導きました。筋書きのないドラマを演じた栗山監督率いる侍ジャパンの夢のような全勝優勝は永遠に語り継がれることでしょう。

初戦から切り込み大将を演じたヌートバー外野手のファインプレーが印象的でした。なんと言っても投打の活躍でMVPとなった。“大谷フィーバー”が、コロナ禍の日本経済に650億円の経済効果をもたらすという試算には拍手喝采です。その後に発表された大谷選手の今期の年収が、メジャー史上最高額の85億円になるといわれ、日本の某球団の全額に匹敵すると言いますから、驚き桃の木山椒の木です。

凱旋後、侍ジャパン選手の多くは3年後の連覇の夢を胸に秘めペナントレースに突入します。同時に大谷選手や吉田選手の活躍ぶりにも目が離せません。

満開の桜が散り始める4月から、鳥インフルエンザによる極度の鶏卵不足もさることながら、またまた原料や諸経費の高騰から値上げ商品が5,000品目にものぼると言われています。語呂合わせで、まさしくネ(音)をあげる年になりそうです。

マスク等の解禁によってインバウンド効果も蘇り、花見時とも重なって内外の観光客が一挙に訪れ、どこの宿泊施設も対応に追われているようです。飲食店も同様で、客足が戻りつつあるのにいずれもスタッフ不足に悩んでおり、こちらは嬉しい悲鳴と言うわけですが、もうすぐ大型連休がやってきます。名実ともに黄金週間になることを期待してやみません。

編集長 日比野隆宏

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