調理師日誌

2024年6月号編集後記

最近、佐渡金山の世界遺産登録が見送られたようですが、一方では日本の「温泉文化」を登録させようという観光業界の動きがあります。自然景観をともなう温泉地では湯治客の温泉療法や旅行客の心身の癒し効果など古来より日本人と温泉の関わりは根強いものがあります。

時に、近年、温暖化の影響で天候不順が続き、自然災害の絶えない日本列島は、もともと世界有数の火山国でしかも活火山が多いと言われています。このところ外国人観光客をとりこにしている富士山(3,776m)の円錐状成層火山)は日本最大の活火山で知られています。

このほど河口湖畔のコンビニ越しの景観が黒幕ネットで遮られて物議をかもし、また危険な軽装での登山客で賑わう霊峰富士山ですが、江戸宝永年間以来、300年以上も噴火がないため、噴火想定の話題が絶えません。ひとたび噴火すれば高温のマグマが噴出し、その溶岩流の被害は従来のハザードマップの範囲をはるかに超える予測が出て、拡大修正されたようです。

飲食店のブース及びセルフサービス形式の食事のための屋台等の共有スペース(屋内型広場)のことをフードコートといいますが、マックなどのファストフード同様アメリカで始まったもの。今や日本の大型商業施設やショッピングモールに付きもののフードコートが全盛の時代です。連日連夜のTV番組やネットによるグルメ情報が溢れており、特にインバウンドによる訪日外国人に人気の「豊洲場外江戸前市場」と温浴「豊洲万葉倶楽部」からなる。”豊洲千客万来”は美食と温泉のにぎわい処として新たな東京スポットになっているとか。

梅雨の晴れ間に、ぜひ和食の魅力を満喫できる「青水無月の献立」を味わっていただきたいものです。

編集長 野澤 武

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2024年5月号編集後記

2013年(平成25年)に和食がユネスコの世界無形文化遺産に登録されて11年になります。文化遺産はその国の文化を守り、保護していくことを目的としているため、いたずらに伝統的な和食を変えてしまうようなことは出来ません。

登録された理由にあるように、和食の特徴は伝統的な技術や知識、食材選定、食事のマナー、季節の変化への適応などが含まれています。和食文化は古代(奈良・平安時代)より、日本の気候風土と海に囲まれた島国であることから、四季折々の自然の恵みとして野菜と魚介類を中心に調理されてきました。

現代のような肉食の文化は明治以降になりますが、時代の変遷と共に、食生活の欧米化が急速に進み、日本人の主食の原点である米の消費量よりパンの消費量が多くなっています。近況によると世界的な小麦の不作による小麦粉の高騰で米粉が見直されており、また御飯のレトルト食品が非常食どころか文字通り、日常茶飯事の人気になっているようです。

和食の必須食材である海産物に温暖化の影響が出始めています。北海道の羅臼昆布(養殖)が減り、富山湾の寒ブリが激減して北海道で獲れたり、東北・北海道で鮭が激減、四国・九州のタチウオが北限を越えて東北で獲れ、茨城県沖のイセエビも東北で獲れるなど、生息域の変化が著しいようです。

相変わらず各地で地震が絶えない上に、今年の夏も猛暑の予想が出ており、異常気象が
異常でなくなる日も来るのではと不安が募ります。また、梅雨時になれば食中毒も多くなりますので、安全安心の食生活のためにも衛生管理の徹底が求められます。

編集長 野澤 武

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2024年4月号編集後記

3月号の編集後記で述べた暖冬の予想が見事に狂い、3月の陽気は寒の戻りと低温の影響で桜前線が停滞し、全国の桜の開花が遅れています。現状では4月に持ち越されるようです。
東京の開花宣言は靖国神社のソメイヨシノの標本木に、5輪以上の花が咲いた時に報じられ、現時点では3月29日に開花して4月4日が満開になると予想されています。

咲き乱れる満開の桜は花見時や花盛り、桜花爛漫とも称され、遠方の桜は花霞とも表現されて。”春爛漫”の主役となります。百花繚乱のどの花よりも勝り日本人に親しまれてきました。桜花はまたその散り際の風情も日本人の心を動かす魅力があり、花吹雪(はなふぶき)や花散里(はなちるさと)、川面に散って流れる花筏(はないかだ)の模様など、今風にいえばインスタ映えのする光景といえます。

近年、最も開発が進んでいるのが人工頭脳(AI)とやらで、生成AIによる人物の顔や音声をそっくりに作られたモデルが公開されて話題になっています。このまま進化すれば将来は人生百年時代どころか、従来の口ボットに代わる高性能なAI人間が出現するのも夢では
ないように思えてきます。

とはいっても人類が絶滅危惧種になるようなことはなく、月に降り立つ宇宙旅行の夢も含めて、まずは足下を見つめながら感情の赴くままに人生を謳歌したいものです。

永朋舎の新春懇親会も盛会裡に終了し、風薫るゴールデンウイークを迎えますが、9月の創立三十周年記念号に向けて、編集部一同、粛々と準備を進めていきたいと思います。会員皆様のご協力をお願い申し上げます。

編集長 野澤 武

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2024年3月号編集後記

「能登半島地震」による被災地の復旧も困難を極めており、避難生活を余儀なくされている方々への仮設住宅の着工も急がれています。ライフラインの浄水場や水道管の補修工事も難航し、断水で未だに不自由な生活を強いられている地域が多いようです。

3月11日は13年前の東日本大震災が発生した日です。巨大津波による行方不明者が現在も2,500人を超えると言われ、原発事故による汚染水(海洋に放水するのは処理水)の問題をかかえながら地道な復興事業が続いています。

2月に春一番が吹き、暖冬の影響で今年の桜の開花は随分早まりそうです。昔からお花見につきものは花見団子で、春の色を表した薄紅色、白、草色の三色団子です。3月3日の桃の節句に供える菱餅も三色になっていますが、こちらの薄紅色は桃の花を表し、白は雪と白酒、薄緑色は草木の芽生えを表しているそうです。

江戸の頃より桜の名所隅田川を挟んで長命寺の桜餅が人気で、これに対抗して生まれたのが「言問団子」です。米粉の団子に小豆餡、白のこし餡を付けたものと、味噌餡をうぐい
す色の求肥で包んだもの。日暮里芋坂の串に刺した名物焼団子「羽二重団子」も有名です。酒の肴に売り出したのがはじまりとか。京都下賀茂神社の「みたらし団子」は砂糖醤油にくず餡をかけた小ぶりで団扇状に10本の串に5個ずつ刺して焼く団子です。厄除けの人形(ひとがた)を模したものといわれ、いろは歌留多にある「花より団子」は桜花爛漫の風情を楽しむより、団子を食べて花見気分を満喫することの例えで「名より実利をとる」ことをいい、「酒なくてなんのおのれが桜かな」も風流とはいえないようです。昔も今もやはり、夜桜には日本料理が似合います。

編集長 野澤 武

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2024年2月号編集後記

令和6年能登半島地震により被災された地域の皆様には謹んでお見舞い申し上げますと共に一日も早い復旧・復興をお祈り致します。

2024年の幕開けは最大震度7を記録した石川県の「能登半島地震」で始まりました。地震と津波、土砂崩れによる甚大な災害で、各県の自治体やボランティア活動の応援を仰ぎながら、道路の修復やがれきの処理、電気、ガス、水道等の復旧作業が続けられています。

三学期を迎える小中学生は親元を離れて、一時的に安全な学校に避難を余儀なくされ、不便を極める避難所には全国から救援物資が届き、寒さを凌ぎながら仮設住宅が設置されるのを待ち望む声が高まっています。災害の絶えない日本では、いつどこで何が起きても不思議ではありませんが、天災は忘れた頃にやってくるという時代ではなくなったようです。

節分は本来、春夏秋冬の移り変わる日の前日をさしていましたが、今では立春の前日のみをさすようになったと言います。また、炒った豆を「福は内、鬼は外」と唱えて福豆をまく習慣も減少し、近年は豆まきよりも関西圈で平成元年頃から始まった。”恵方巻”を食べる習慣が全国的に普及しつつあります。広島県のセブンイレブンで販売されたのが契機となり、その年の恵方(東北東)を向いて7種類の具を巻き込んだ太巻を食べると商売繁盛、無病息災に恵まれるという縁起物です。鬼の金棒に見立てたとの説もあります。

永朋舎の会員のみの新春懇親会は2月18日に行われます。皆さんのご出席をお待ちしております。

編集長 野澤 武

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