調理師日誌

2025年6月号編集後記

献立などに用いられる6月の異名(異称)は水無月が多く、他に歳時記によれば水月、旦月、季月、青水無月、風待月、涼暮月、松風月、鳴神月などがあります。

水無月の語源では梅雨が終わり、水も涸れる意という説と、反対に水の月とする水月は田植えが終わり、田に水をたたえる月であるという説もあります。また一般に青水無月といえば青葉が茂る頃をいい、6月の献立に使う人も多いようです。6月の梅雨時の花には菖蒲(あやめ)や紫陽花などがありますが、梅雨月と同様”菖蒲月”なども和風月名に見当たらないのは意外な感じがします。もっとも菖蒲(しょうぶ)は端午の節句の菖蒲湯に使う葉のイメージがありますから、同じ漢字ですので日本語は紛らわしいものです。

7月になると夏の風物詩の浅草の鬼灯(ほおずき)市や入谷の朝顔市が賑わいを見せます。7月10日の浅草寺(浅草観音)参りは四万六千日にあたり、この日にお参りすれば四万六千日参詣したと同じ功徳があるといわれ、現在でも信仰の対象になっています。京都の清水寺の観音様では二万五千日の功徳があるとされています。

四万六千日の根拠はよくわかりませんが、うがった見方をすると、一年365日で計算してみると126年となり、人生100年時代の究極の生涯年齢を想定させるような数字に思えます。長寿の祝いも白寿までは広辞苑にありますが、百賀の祝いや百寿百福は見当たりません。

余談になりますが、欧州式の結婚式も25年の銀婚式、50年の金婚式までは日本でもよく行われますが、55年のエメラルド婚、60年のダイヤモンド婚は馴染みがありません。それよりも、米国の黄金時代を吹聴するトランプ大統領の相互関税問題は日本経済にとって深刻です。石破政権の命運をかけてぜひとも打開してほしいものです。

編集長 野澤 武

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2025年5月号編集後記

4月13日に158の国と地域及び7つの国際機関が出展する「大阪・関西万博」が開幕しました。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」ということで、最新の科学技術や世界各国の文化に触れることができる「見どころ」もあり、「いのち」をめぐる最新技術は「IPS細胞」から作られたTIPS心臓」や次世代の交通手段ともいわれる「空飛ぶクルマ」などが体験できる魅力もあるようです。

埋め立て地の夢洲にできた世界最大級の釘を使わない木造建築の大屋根リングは全周2kmもあり、前評判の割には雨天にもかかわらず初日から大変な混雑ぶりのようです。6ヶ月間(10月13日まで)の会期中2,820万人以上を見込んでいるようですが、海外パビリオンも含め、「見どころ」の多い万博会場に一度は足を運んで見たらいかがでしようか。

国の主食である米の値段が米不足が原因で暴騰し、政府が備蓄米を放出するも前年の倍以上の値段は一向に安くなりません。生産量の減少や需要の急増、備蓄米放出の遅れ等が原因といわれますが、遠因は4年間に及ぶコロナ禍にあるようです。外食産業の落ち込みで一気に減ったところに、コロナ終息後の輸出拡大と急速な需要が重なり、需給のバランスが崩れた結果と見られています。

いずれにしても国の備蓄米は5ヶ月間で百万トンの放出計画があるものの人気が集中しているふるさと納税の返礼品中止の地域もあり、秋の新米も含め、生産を増やすにも後継者不足の米作り対策の問題は急務のようです。

まもなくゴールデンウイークになりますが、1年で最も凌ぎやすい季節で、端午の節句と共に使い古した名句「目には青葉山ほととぎすはつ鰹」(素堂)に四季折々の旬の素材を用いる日本料理の原点を感じます。

編集長 野澤 武

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2025年4月号編集後記

三日ほど寒い日が続いた後に四日ほど暖かい日が続くことを三寒四温といいます。冬の季語ですが、これを繰り返す内に春が訪れます。古い句に「冴え返り冴え返りつつ春なかば」(泊雲)というのがあります。今年の2月~3月の陽気は気圧の変化で1日で10℃も気温の違いを生じる寒暖差がありました。

お彼岸の中日は春分の日です。暑さ寒さも彼岸までの諺通り、春暖の候となり、すでに桜前線も北上し、気象予報では今年の東京の開花予想は25日頃とされています。やがて桜花爛漫の春がきて、ともすれば桜満開の時季でも花冷えのする年もあり、震えながら夜桜見物になることも。

また、この季節最も厄介なのは花粉症でしょう。スギやビノキの花粉が春風にあおられて飛散し、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、涙目などのアレルギー症状に悩まされます。今や日本人の4人に1人といわれる国民病です。アレジオン等の抗ヒスタミン剤の市販薬が薬局の店頭に並んでいます。

まさに”対岸の火事”と思えた米国ロサンゼルス近郊の1月から2月にかけて発生した山火事は住宅地を巻き込む大火災となりました。送電設備からの出火と思われ一万棟とも言われる建物の損壊があり、10万人以上が避難、20兆円を超える損害を被ったと報道されたばかりでしたが、その矢先の3月初めには岩手県大船渡市で山火事が発生し、見る見るうちに市の9%にあたる面積が消失。4,600人が避難して鎮火するのに12日間も要する大規模山林火災でした。

山火事が多発する要因が近年の気候変動の影響が災いしているとはいえ、自然発火ではなく、大船渡の場合も落ち葉を燃やしたのが直接の原因であり、全くの人災でした。まさに火の用心。火を扱う料理人としてくれぐれもご用心のほどを。

編集長 野澤 武

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2025年3月号編集後記

二十四節気の始めにあたる立春は例年2月4日(節分は2月3日)になりますが、今年は37年ぶりに2月3日(節分は2月2日)となりました。年中行事の豆まきも今ではイベント化して成田山新勝寺などの有名人の豆まきが報じられ、家庭ではいつの間にか恵方巻を食べて福を招く習慣が生まれました。

旧暦では正月節で寒明けとなり、春の気が立ち三寒四温を繰り返し、春一番が吹き荒れるといよいよ春の到来です。馥郁たる紅白梅の匂いから桜前線の北上と共に開花予想が発表され、もうすぐ桜花爛漫の春本番を迎えます。

昨年11月大統領選で再選されたドナルド・ジョン・トランプ氏は1月21日に第47代米国大統領(2期8年)に就任しました。早速、関税引き上げやパリ協定、WHOからの脱退などの大統領令に署名し、就任演説ではアメリカの「黄金時代」が始まると宣言し、世界中に強烈なメッセージを発しました。

その4週間後の2月8日に、日本の石破茂首相が米国を訪問し、ホワイトハウスで初の日米首脳会談に臨みました。大方の不安予想を払拭するような用意周到の成果を収め、対米投資の拡大、米国経済への貢献などを強調し、初対面としての意気投合ぶりが印象的でした。

注目のお土産は安倍首相が金のドライバーだったのに対し、石破首相は黄金時代にふさわしい金の兜でした。これには米国で話題になったエミー賞の「SHOGUN」と大谷選手がエンゼルスでホームランを打った時にかぶった兜にあやかったとも言われています。

3月18・19日に東京ドームで開催するMLBドジャースとカブスの開幕戦が待たれます。

編集長 野澤 武

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2025年2月号編集後記

令和7年の元旦は昨年の能登半島を襲った地震の悪夢とは打って変わり、青森県の大雪を除き、穏やかな冬日和となりました。正月恒例の第101回箱根駅伝は晴天に恵まれ、2日(往路)3日(復路)に亘って行われ、青山学院大が大会新記録で2年連続8度目の優勝を飾りました。

箱根と言えば昔から日本有数の温泉・保養地で知られ、富士箱根伊豆国立公園の中心で国際的観光地として親しまれてきました。現在の神奈川県足柄下郡箱根町は芦ノ湖湖畔の旧宿場町で、通称元箱根。旧東海道五十三次の小田原から三島の間の宿(あいのしゅく)として発達し、「入鉄砲に出女」を厳しく取り締まる関所があった場所で、今では芦ノ湖遊覧船の発着地点となっています。箱根峠は静岡県との県境にあり、昔の馬子唄に「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」と歌われていました。ちなみに大井川は江戸時代に渡し船が禁止され、旅人は人足を雇って肩車か輦台(れんだい)で渡ったと言われています。

昨年末から全国でインフルエンザが猛威をふるっていますが、新型コロナのウイルスも根強く残っており、ワクチン接種とマスクの着用、手洗い、消毒等の励行で感染リスクを完璧に抑えたいものです。

今年最大の催しは4月13日から大阪市の人口島「夢洲」で始まる大阪・関西万博ですが、未だ入場券が大量に売れ残り、一向に盛り上がる気配がなさそうです。7月には参院選挙、都議会議員選挙が予定されており、早くも与野党の議席数をめぐる攻防が取り沙汰されています。

永朋舎では会員のみの新春懇親会が2月16日に行われます。皆さんのご出席をお待ちしております。

編集長 野澤 武

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