日本たべもの総覧
日本たべもの総覧(11)
油揚げ【あぶらあげ】
豆腐を切って軽く圧しをして水気を取り、油で揚げたもので、煮物・汁の実・五目飯の具・和え物・いなり寿司など、用途が広い。焼いて生姜醤油で食べてもいける。薄めに切った薄揚げが一般的だが、用途に応じて厚めに切った生揚げ(なまあげ)を使う。信田稲荷の神体であるきつねの好物にあやかり、油揚げを使った料理に信田巻、信田煮など信田(信太)の名を付ける。
納豆【なっとう】
納豆には2種類あり、関東の納豆は「糸引き納豆」、近畿地方の納豆は「塩辛納豆」である。糸引き納豆は、蒸すか煮た大豆に納豆菌をつけて発酵したもので、藁苞(わらづと)に包むのは稲わらについている納豆菌を繁殖させるためである。しかし現在は純粋培養した納豆菌を付着させて作ることが多い。
「水戸納豆」で知られる水戸には、糸引き納豆についての伝説がある。昔八幡太郎義家が奥州へ向かう途中水戸付近で休んだが、たまたま馬に喰わせるわらの上に捨てられた煮た大豆がほどよく腐っているのを発見。主従が食べて見たところ大変美味だったので、以後研究を重ね今日のような納豆を創り上げたという。
伝説の真偽はともかく、東北地方では糸引き納豆の豆を割ってあるものが多い。もともと豆をたたきつぶして作ることが多かったらしく、「たたき納豆」とも「挽き割り納豆」とも呼ばれる。一方「塩辛納豆」は、糸引き納豆より前に主として僧侶の手によって中国から伝えられたものである。醤油麹カビを蒸し大豆につけて作った「こうじ豆」を塩水に漬け、4ヶ月ほど発酵させた後日光に当てて乾かして作る。京都および浜松の特産物として知られ、いずれも◯◯寺納豆と寺の名を冠しているので「寺納豆」ともいう。つまり寺の精進料理だったわけである。納豆の名の起こりは寺の納所(なっしょ)で作られたからといわれている。
蒟蒻【こんにゃく】
「こんにゃく」という草の塊茎。いわゆる「こんにゃく玉」を煮て皮をむき臼でよく搗いた後、石灰乳を加えて箱に入れ形を整える。これを再び煮た後水中に蓄えて作る。「こんにゃく玉」を乾燥させて粉にしたものを「こんにゃく粉」というが、この場合も水を加えて混ぜ、ねばりが出たら石灰粉を加えて作る。
こんにゃくの主成分マンナンが炭酸ソーダや石灰等のアルカリ性のもので固まる性質を利用して作られる。色が白くて柔らかい都会製のものより、黒くてぽきぽきした田舎製のほうが混ぜものが少なくて美味である。長方形に切ったもののほか、繊切りにした「糸こんにゃく」や、もっと細い「しらたき」、丸めた「玉こんにゃく」など、形もさまざまであるが、糸こんにゃくやしらたきは鍋料理に、田楽や煮物には長方形のものを用いる。変わったこんにゃく料理では、胡麻油で炒めて汁にした「狸汁」、炒めた後葱や削り牛蒡といっしょに煮た「すっぽん煮」などがある。なおこんにゃくを茹でこぼして味付けするより、むしろ乾煎りにするほうがよい。また庖丁で切らずに指でちぎったほうが食感もよく旨い。
刺身こんにゃくは、茨城県北部や上州下仁田地方の郷土料理。酢味噌や山葵醤油、辛子醤油で食べる。こんにゃくが凝固する際に石灰分を少なめに加えて製造する。精進料理の献立には刺身代わりで用いられる。
参考資料「日本たべもの百科」新人物往来社刊