日本たべもの総覧
日本たべもの総覧(16)
酢【す】
酢は塩とともにもっとも古くから用いられた調味料で、世界各国とも酒の酸敗によって得たものらしい。したがって酢は酒の発見とともに発生したと考えられる。しかし日本では梅の実の塩漬けによってできる梅酢と味が同じなので、酢を「梅」であらわし、塩と合わせて味加減のことを「塩梅=あんばい」というようになった。
現在日本では清酒から造られた酒酢、酒粕を原料とする粕酢、米と麹で作る米酢(よねず)のほか、木材を乾留して得た酢酸をもとにして香料や着色料、アミノ酸などを加える酢酸酢または合成酢などがある。
味としては発酵過程を経た醸造酢が優れているが、酢酸酢または合成酢が次第に比重を高めつつある。利用法としては、刺身、なます、酢の物などのほか、飯に混ぜたり、魚貝類を酢漬けにしたりする。よく知られているの調味酢(合わせ酢)には酢と醤油を合わせた二杯酢、これに酒または味醂を加えた三杯酢、煮立った酢に焼塩を加えて冷ました煮返し酢、同量の酢と醤油を煮て冷ました合わせ酢、酢と酒、塩を加えて煮て冷ました七杯酢などがある。なお酢に熱を加える場合には耐酸性の鍋を用いることが必要である。
柑橘類のダイダイ、スダチ、ユズ、レモンなどの搾り汁を酢と同様に用いる果汁酢がある。オランダ語のポンスにあやかり「ポン酢」と称する。このポン酢に醤油を合わせたものが「ポン酢醤油」で、刺身やちり鍋には欠かせない調味酢となっている。
茹でガニを食べるときの酢「カニ酢」には、好みによって二杯酢、三杯酢、ポン酢醤油などが用いられる。基本は酢と醤油を合わせて煮立て、冷ましたものに生姜汁を少々加えるが、出汁を加えた美味しいものが好まれる。
砂糖【さとう】
砂糖は蔗糖(スクロース)の通称。砂糖の原料は大部分が甘藷(サトウキビ)で、ほかに甜菜(テンサイ=ビート=サトウダイコン)などがある。紀元前325年、アレキサンダー大王の軍隊がインド遠征したとき、すでにインドでは甘藷から糖分を得ていたという。一説によると甘藷の原産地はインドであるが、製糖法を発明したのは中国人であるともいう。さて日本では古来、ハチミツおよびアマズラという茎から出る汁によって甘味を得ていた。記録によると初めて砂糖を知ったのは647年、唐僧鑑真が孝謙天皇に献上した時だという。もちろん当時もその後も砂糖は貴重品で、貴族でも砂糖に接することはまれだった。
やがて800年ほど後、南蛮船の渡来とともに砂糖を広く知られるようになったが、日本で初めて甘藷を栽培したのは1610年、奄美大島の直川智が漂着先の中国福建省から苗を持ち帰り、黒砂糖を作ってからだという。
その後甘藷の栽培と製糖法の研究が試みられ、鎖国後の江戸中期以降、将軍吉宗が江戸城内に栽培させるなど、熱心に取り組むようになった。なかでも特筆すべきは平賀源内で、宝暦1年(1751年)、和三盆と称する純白の砂糖の精製に成功した。現在砂糖は黒砂糖、赤砂糖、赤ザラメ、三温糖、上白糖、和三盆などのほか、グラニュー糖、コーヒーシュガー、オリゴ糖、アスパルテーム等の人口甘味料を含め多くの種類がある。また和菓子、洋菓子類にはもっともふんだんに使われている。したがって砂糖の摂り過ぎや摂り過ぎによるカロリーオーバー、カルシウム不足が気遣われている。
参考資料「日本たべもの百科」新人物往来社刊