日本たべもの総覧

日本たべもの総覧(35)

紅茶【こうちゃ】

紅茶

日本では古来、中国から伝わった緑茶だけを用いたが、喫茶の風習は西方、ヨーロッパ方面では紅茶となって発達した。緑茶は茶の芽および茶葉を蒸してから乾燥させるが、紅茶は蒸さずに発酵させるので発酵茶と呼ばれることもある。国産品にも紅茶があり、緑茶とともに輸出されているが、紅茶の名産地として世界的に名高いのがセイロン産のものである。ふつうは緑茶と同じように熱湯を注ぎ、ストレートで飲むか、レモンの一片を浮かべて飲むレモンティー、ミルクを入れるミルクティーが一般的である。英国式のミルクティーは、先に牛乳を入れてから紅茶を入れる。または牛乳に同量の水を加えて沸かし、紅茶を入れて茶こしで漉して飲む方法もある。

ロシア紅茶はホルダー付きのグラスでジャムやマーマレード、ハチミツ等を加えて飲むので知られている。

【ちゃ】

緑茶

茶はつばき科に属する常緑の灌木で、温帯から熱帯にかけて生え、日本にも自生していた。しかし日本では用途を知らず中国から教えられるとともに、種子も輸入した。喫茶の起源は中国といわれて、太古には神農が70の毒に遭ったが茶を服して解毒したという伝説があり、3世紀には喫茶の方法を詳しく記した書物も著された。中国から喫茶を伝えたのは、鎌倉初期の禅僧榮西である。このとき茶の種子を持ち帰って植えたほか、帰朝後「喫茶養生記」を著すなど、大いに喫茶の普及につとめ、また将軍源実朝の気鬱を茶で散ずるなど、数々の功績を示している。

その後、禅の発達にともなって「茶の湯」が普及し、鎌倉・室町を経て戦国時代になると、堺の商人など町人階級によって著しい進展をみた。さらに江戸中期になると、煎茶が広められ、国民全体の日常的な飲料となって不動の地位を確立した。

自家用には、国内至るところで産するが、産地として著名なのは宇治茶、静岡茶、狭山茶が代表的でほかに各地の名産がある。緑茶には、大別して4種ある。一番上等なのは「玉露」、次が「抹茶=挽き茶」、さらには一般に急須にお湯を注いで用いられる「煎茶」があり、大衆的な「番茶」がこれに続く。香りが香ばしくて広く人気のある「焙じ茶」は番茶を焦がし気味に焙じたもので、玄米を焙じてブレンドした「玄米茶」、寿司屋でよく使われる細かく粉状にした「粉茶」がある。茶道(茶の湯)で用いられる「抹茶」は茶の新芽を蒸して乾燥し、臼で挽いて粉末にしたもの。茶筅で立てて飲用する。抹茶の分量で濃茶と薄茶の立て方がある。

近年は缶やペットボトル用に加工されたソフトドリンクが普及し、自動販売機等で夏はクール、冬はホットで大量に消費されている。

珈琲【こーひー】

珈琲

あかね科に属するコーヒー樹の果実の中にある種子をコーヒー豆と呼び、この豆の焙じて粉状に挽いたものを熱湯で煎じて飲用する。専用の道具に豆を挽くコーヒーミルや水蒸気の圧力を利用して沸かすサイフォンがある。

原産地はアフリカ、エジプト地方といわれるが、誰も用い方を知らなかったころ、アラビア人が初めて試食してみたという。

コーヒーには睡気を防ぐ作用があることはよく知られているが、修行に励む回教徒はコーヒー豆のこの作用を知って喜び、豆を煎って食用としたり、一種の酒を造ったりして愛用した。しかしヨーロッパの人々には回教徒の用いる麻薬のように見なされ、不眠をもたらして精神を不安に陥れると恐れられた。

一方15世紀に入ると今日のように熱湯を用いて煎じて飲むようになった、コーヒーには一種の殺菌力があり、天然痘を防ぐことが発見されたりして、ヨーロッパ人の誤解も次第になくなり、今日では世界中に愛飲家が増え、代表的な嗜好品としてインスタントコーヒーも含めて莫大な量のコーヒー豆を消費するに至っている。

日本では明治21年に東京上野で初めてコーヒー店が開店し、さらに京橋や銀座にもできたが、まだ一部の愛好家に賞味されるにすぎなかった。本格的にコーヒーの導入がはかられるようになったのは明治末年からである。その後急速に喫茶店が増え愛好家も増加して、現代では自宅で挽き立てのコーヒーを楽しむ本格派からインスタントコーヒーを楽しむ人まで含め、むしろ日本茶や紅茶よりもコーヒー好きの人が多い。

参考資料「日本たべもの百科」新人物往来社刊

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