日本たべもの総覧
日本たべもの総覧(18)
胡椒【こしょう】
ひとくちに「塩・胡椒」といわれるほど、「胡椒」はヨーロッパの代表的な香辛料である。紀元前四世紀頃、すでにギリシャでは「胡椒」を知っていたが、有史以降、需要はますます増え、「黒胡椒」と「白胡椒」に分かれたほか、国によって用い方に変化が生じた。すなわち、フランス料理では台所で料理人がひいた挽き立ての「胡椒」を用い、イギリスやアメリカでは、振り出し機に入れた「胡椒」を卓上に置き、各人の好みによって振り掛けるようになっている。
「胡椒」はインド原産の蔓になる灌木で、高さは約3メートルに達する。5~6月頃、白い花が開き、小さな球形の実を結ぶ。実は、緑色から熟するに従って紅くなるが、成熟前に採って乾燥させたのが「黒胡椒」で、文字通り黒色を呈している。一方、成熟した実の皮や肉を取り去り、種だけを乾かした物が「白胡淑」で、色が白い。
最近、日本でも「黒胡椒」がよく見られるようになったが、一般には香味のやわらかい上品な「白胡淑」のほうが好まれるようである。しかし、食通は挽き立ての「黒胡淑」を推奨する。なお、熱帯産の「胡椒」を日本に移植することができたため、国産の「胡椒」もあるが「そば粉」を混ぜて日本人の好みに合うように調整してある。
桂皮【けいひ】
桂皮は、中国産のクスノキ科の植物「トンキンニッケイ」の木の皮を削って乾燥させたものである。似たものに、セイロン桂皮があるが、これらは「シナモン」と呼んで区別することがある。また、日本でも桂皮を産するが、普通、「肉桂皮」と呼ばれている。桂皮は香りが高く、また媚薬としての効果もあるため、非常に古くから用いられた。『旧約聖書』にも登場している。香りが高く、苦味のないものが上等であるが、現在では料理のほかに、健胃剤などにも用いるし、桂皮油を採って菓子の製造にも使っている。
丁字【ちょうじ】
丁字は丁字香または丁香とも書く。フトモモ科の、高さ10メートルにも達する常緑樹から採る。この木は最初、モルッカ諸島にしか生えていなかった。そこでこれらの島は香料諸島と呼ばれ、ポルトガル、スペイン、イギリス、オランダなどヨーロッパ諸国のあいだで、激烈な争奪戦が展開された。なにしろ、十六世紀初頭にはヨーロッパの丁字の値段は、産地の三百数十倍にも上ったというから、いろいろな費用を差し引いても貿易商には莫大な利益が転がり込んだわけである。これらの利益を得ていたのはヴェネツィアの商人であったが、東インド航路がひらかれて、ポルトガルの商船が安く丁字を供給するようになると、ヴェネツィアの商人達は非常な打撃を受け、衰運におもむくことになった。
丁字はチョウジの木のつぼみを採って乾燥させたものである。香辛料のほか、健胃剤やかぜ薬にも用いる。また、丁字を蒸留してつくる「丁字油」には、麻酔作用があるので薬用にも用いる。その他、菓子や香水など非常に用途が広い。
香辛料の効用
辛味料・香味料・着色香辛料に大別される。香辛料は食物に辛味を与え、味を調えて食欲を増進させる。またその刺激性により消化酵素の分泌を促し消化を助ける。防腐効果や生理的薬理効果も期待される。
香味料は食品に芳香と風味を与える。大部分の香辛料(スパイス)はこの目的で使用される。
着色香辛料は色素を利用して食品に色を付ける香辛料。ウコン、サフラン、クチナシ、赤色パプリカ
参考資料「日本たべもの百科」新人物往来社刊