日本たべもの総覧

日本たべもの総覧(33)

濁酒【どぶろく・だくしゅ】

濁酒

にごりざけ、もろみざけともいう。もともと日本にあった酒で、「こうじ」と蒸した米と水でつくった醪(もろみ)をもとに醸造した酒で、どろどろとして白く濁っている。この濁酒を袋に入れ、押し絞って液すなわち清酒と酒粕を分離する方法は、すでに平安時代から知られていたという。

清酒が出回るようになってからでも、自家製として至るところで造られていた。島崎藤村が「にごり酒にごれる飲みて」と詠ったのは明治時代になってからである。つい最近も、太平洋戦争中と戦後、清酒の不足時代にさかんに造られた。

もっとも、現在では熟成した濁酒を放っておいて、上澄みだけをくみ取り、「中汲」と称して売っている店もある。

燗酒【かんざけ】

燗酒

酒を器に入れて適度に温めることをいう。燗酒を用いるようになったのは九世紀の初め、公卿の間で広まったようである。温めることで悪酒のフーゼル油分が失われるので生理学上からいっても「悪酒は燗酒にせよ」というのはあたっている。しかし、燗のために酒のクセが強く出るから、良酒の場合はやはり 「燗は人肌」程度がよい。

焼酎と泡盛【しょうちゅうとあわもり】

日本酒のような醸造酒のアルコール度は、だいたい20%くらいまでである。酵母の力には限界があるからである。そこで、さらに強い酒を得ようとすれば、発酵してできた酒を蒸留して濃縮するわけである。この蒸留酒が焼酎や泡盛である。焼酎は清酒粕を用いるのはもちろん、米、麦、粟、とうもろこし、さつまいも、じゃがいもなどで作った「こうじ」を発酵させたものを蒸留して造る。似たものに朝鮮焼酎がある。これは普通、濁酒から蒸留しており、一種のこうじ臭さをともなっているほか、焼酎と異なって濁っていることが多い。

日本酒しか知らなかった日本人に、焼酎の製造法を伝えたのは、戦国時代に来朝したいわゆる南蛮人と中国人といわれている。焼酎の一種で、沖縄の特産として知られるものに「泡盛」がある。

これは、粟または砕け米を用いて造ったもので、自年以上も貯蔵して美味に熟成したものもめずらしくないという。

味醂【みりん】

焼酎に半こうじと蒸した餅米を混ぜて糖化させ、一〜二ケ月後に漉して造る。

やや黄色みをおびているが透明で甘味の多い酒である。そのまま飲用するほか正月の「屠蘇酒」や「白酒」の原料として用いられる。また、焼酎と混ぜたものを「直し」と呼んで夏場に暑気払いに用いた。現在では、もっぱら料理の煮物や焼物の調味料として利用され、砂糖より上等な甘味料として知られている。

参考資料「日本たべもの百科」新人物往来社刊

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