日本たべもの総覧

日本たべもの総覧(4)

七草粥【ななくさがゆ】

七草粥

七草には春と秋の2種があるが、古来より正月7日に春の七草を粥に入れて神に供え、家族も食べるならわしが盛んであった。用いる七草はせり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろが一般的であるが、時と所によりさまざまであった。起源については諸説があり、平安時代に米・麦・小麦・粟・黍・大豆・小豆を炊き混ぜた飯を正月15日に食べていたことと、7日の若葉摘みの行事が結びついたと考えられる。長い間宮中などの限られた行事であったが、江戸幕府が五節句の一つと定めたため、俗に「七日正月」と呼ばれていっそう盛んになった。民間では6日の晩か7日の早朝に「七草なずな、唐土の鳥が、日本の土地に渡らぬ先に」とはやしながら、若菜を叩いて刻む風習が各地で行われた。後年菜粥と称して若菜を象徴する薺(なずな)または油菜(あぶらな)だけを用いるようになった。

小豆粥【あずきがゆ】

もともと正月15日に小豆などの7種の穀物を炊き混ぜた飯(かたがゆ)をつくる風習があったが、7日に七草粥をつくるようになってから、15日に小豆粥を食べる行事に変わったものと思われる。関西では塩を加えて炊くが、粥に慣れない関東では塩を入れず、炊き上がってから霜糖を加えて食べた。

おじや(雑炊)【おじや】

雑炊

七草粥のもとは、若菜を摘んであつもの(羹)をつくることであった。したがって粥は本来味を付けないのが正式であるが、京都ではあつもの汁に味をつける風が生まれた。室町時代に味噌汁が広まると将軍足利家では味噌を加えた七草雑炊をつくるようになり、民間にも広まった。これを「御みそうず」と呼んだが、やがて雑炊一般を関西では雑炊、関東では「おじや」と称し、「於慈也」の字をあてるようになった。

ねぎ雑炊【ねぎぞうすい】

ねぎには独特の臭みと刺激があるが、それが魚や肉の臭気を消し、消化を促すので古くから広く用いられた。味噌と合うこともよく知られ、味噌味の雑炊にねぎを入れたものを関西では「ねぶか雑炊」、関東では「ねぎ雑炊」と呼んだ。ねぶかとは根深ねぎの略称。転じてねぎの異称となった。

かき雑炊【かきぞうすい】

牡蠣(かき)の養殖は起源前にさかのぼるといわれるが、日本では17世紀に広島で始まったと伝えられている。料理法は多様であるがそのひとつに直接飯に炊き込む方法がある。現在釜飯の一つにかき飯があり、昔関西では味噌汁のかき雑炊が食卓に供され上等な雑炊として喜ばれた。

ふぐ雑炊【ふぐぞうすい】

すっぽん雑炊と並ぶ料理屋で味わう雑炊。ふぐちり(てっちり)を食べて残った鍋汁を漉して飯を入れてつくり、溶き卵と分葱を入れてかき混ぜ、火を止めて蒸らす。白子と餅を入れて食べる白子雑炊がふぐ雑炊の醍醐味といわれる。

大根飯【だいこんめし】

大根飯と大根雑炊がある。大根と米と一緒に炊く場合は出汁昆布を敷き、大根と米を入れ、塩・酒・醤油で味を付けて炊き上げる。分けて炊く場合は大根の煮汁と出汁昆布を加えて飯を炊き、炊き上がったら大根を入れて充分に蒸らして食べる。大根を煮るのにくちなしで色付けしたり、薄揚げを炊き込んだりする。

参考資料「日本たべもの百科」新人物往来社刊

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