日本たべもの総覧
日本たべもの総覧(17)
鰹節【かつおぶし】
かつおの肉を煮て乾燥したもので、日本独得の重要な水産加工品である。「松魚節」とも書き、また「かつぶし」ともいう。とくに「勝男」の字をあてて縁起を喜び、祝儀の贈答品としても広く用いている。古来、日本では干魚を保存食品として用いたが、腐りやすい初夏から秋にかけて大量にとれる鰹などの魚は、生食しきれぬ分を煮て、陽に乾かしたり、炉の上にのせて煙でいぶしたりしたようである。
しかし、記録によると、延宝二年(1674年)、紀州の漁師が土佐の近梅に出漁したおり、同国宇佐浦で、今日見るような鰹節を製造したという。いずれにせよ、長い歳月の間におのずと出来上がった日本の特産物で、梅干しとともに兵食として奨励・研究され、旅行者にも必携の食料品となった。江戸時代までは、各地に特有の製造法があり、薩摩式、土佐式、伊豆式などと呼ばれたが、明治になってから製法がまじりあい、今日ではほぼ共通の作り方になっている。
鰹節の見分け方は、カビの色が薄く、紅色がかった肌に、桃色のつやのあるものがよい。もちろん、割れていたり、虫食いのあるものはよくない。削った鰹節を「花がつお」といい、お浸しや冷や奴にかけて食べる。「出汁」をとるときは、煮立った湯に入れ、もう1度煮立ったら、すぐ火を止める方法と、水から入れて煮立つ直前に火を止める方法がある。
いずれにしても、そのままにしておくと「出汁」が再び「出汁ガラ」に吸収されてしまうので、火を止めると同時に、ひとつまみの塩を入れるとよい。もっとも、塩を入れると「出汁」がよく出ないから順序を誤ってはならない。
煮干し【にぼし】
魚貝類を、一度煮てから乾燥させた食品のことをさす。したがって、帆立貝などの貝柱や干し海老をはじめ、イカナゴ、アジ、また中華料理に用いるものもあるが、一般にはカタクチイワシの幼魚が「煮干しイワシ」として使用される。脂肪分が少なく、銀白色のつやがあり、形の崩れていないものがよい。頭や腸をとって用いる。
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香辛料【こうしんりょう】
スパイスの訳語で、ほぼ日本語の「薬味=やくみ」にあたる。芳香や辛味などを有する植物性の食品で、味を引き立て異臭を消し、食欲を刺激するなどの働きをする。日本の家庭でよく使う香辛料には、ワサビ、カラシ、コショウ、サンショウ、ショウガ、ミョウガ、シソ、トウガラシ、セリ、ミツバ、ウド、ネギ、ユズ、ノリ、カレー粉などがある。
ヨーロッパでは、昔から獣肉が食事の中心であったから、肉の臭いを消したり中毒を防ぐために、香辛料は不可欠のものであり、古くから香辛料を探し求めていた。最初にヨーロッパへ「コショウ」などを持ち込んだのは、アラビア商人であった。そこで、アラビアが香辛料の生産地だと思われたが、じつは南インドとモルッカ諸島が主産地であった。中世になると香辛料の取引は主としてイタリアのヴェネツィアで行われるようになった。このためヴェネツィアは大いに発達し、香辛料商人たちは、しこたま儲けることができた。
ところが、十五世紀に入るとオスマン帝国がおこってヨーロッパとインドとの貿易を妨げた。そこで、ヨーロッパではインドへの新航路を発見し、香辛料を手に入れようとして、つぎつぎに大洋へ船出していった。コロンブスやヴァスコ・ダ・ガマが、その代表者である。
こうして新航路や新人陸の発見など、いわゆる大航海が現出し、世界は一つになり、近代が開けることになった。
参考資料「日本たべもの百科」新人物往来社刊