調理師日誌

2021年6月号編集後記

 梅酒用の青梅や梅漬け用の南高梅等がホワイトリカーや赤じそとともに店等に並ぶ青梅雨の候となりました。

 食材事典等によれば、梅の原産地は中国からアジア東部といわれますが、中国では二千年以上も前から漢方に利用されており、湖南省長沙の古墳から青梅を真っ黒に蒸し焼きにした“鳥梅”が発見されています。日本では中国伝来の栽培樹として古来薬用や観賞用に用いられてきました。平安時代に梅干しが作られ、貯蔵食品として戦国時代の兵糧(戦時における将兵の食糧)として重宝されました。江戸時代には水戸藩主徳川光圀公が梅の木の培養を奨励したため、全国各地に観梅の名所ができ、現在では梅の実が梅酢や梅干し、梅肉エキスの効能とともに民間療法の漢方の一種に数えられています。

 「梅は三毒を断ち、その日の難をのがれる。朝夕一個で医者いらず」といわれ、梅肉エキスは食あたり、下痢、嘔吐、腹痛に使用されるほか、頭痛のときにこめかみに梅干しを貼ったり、乗り物酔いには口に含み、へそに貼る方法もあるそうです。関節リウマチや腰痛に、青梅を酒に漬けた梅酒を一日数回患部に塗ると効果的です。ただし、青梅を生で食べると中毒を起こすことがあるので禁物です。

 梅干しといえば昔から「日の丸弁当」と称して飯の真ん中に赤い梅干しを詰めた弁当やおにぎりの具にされてきましたが、近年ではおにぎり屋で最も売れないのが梅干しだそうです。酸っぱい味が苦手な大人や子供が増えてきている証拠です。塩分8%以下の塩分控えめか蜂蜜入りの甘い梅干しが売れ筋だそうです。このところ最近ではワクチンも集団接種が増えて来ましたが、唾液によるPCR検査では梅干しを見せる効果もあるようで。

編集長 日比野隆宏

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2021年5月号編集後記

 青葉若葉の爽やかな季節が到来し、すでに沖縄県では梅雨入りとなりました。地球温暖化による影響が少しずつ季節のリズムを狂わせています。1年以上も続くコロナ禍で不安な日々を送る日本に、4月12日早朝のテレビ中継でビッグニュースが届きました。

 国内外に報道されたのは、日本人初の四大メジャー制覇!松山英樹プロ(29歳)が米ジョージア州オーガスタで行われていた「マスターズゴルフ・トーナメント2021」で、十度目にして悲願達成の初優勝の快挙を成し遂げたのです。これまで日本人のみならずアジア人勢で誰もなし得なかった偉業を究極の一打差で逃げ切り、見事な金字塔を打ち立てました。グリーンのジャケットに袖を通し、満面の笑顔でのガッツポーズとトロフィーを抱く姿が印象的でした。

 後日、初訪米後の菅総理から、多くの国民に勇気と感動を与えてくれる出来事だと最高の栄誉を称え、ゴルフ界では34年ぶりという岡本綾子プロ(賞金女王)に次ぐ二人目となる内閣総理大臣顕彰を授与されました。松山選手は、四国松山市の出身で学生時代(東北福祉大)を東北で過ごしたことから東北復興への思いは強く、復興をアピールする東京五輪では金メダルを目指すことを誓っていました。

 4月から物価が値上がりするものがある中で、商品やサービスの価格表示が変わり、消費税込みの表示が義務づけられました。目をこらして見ると食料品などは相変わらず税抜き表示を大きく、税込み価格を小さく表示する傾向があるようで、消費者心理を微妙にくすぐります。

編集長 日比野隆宏

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2021年4月号編集後記

 前号の桜の開花予想が見事にはずれ、福岡で3月18日が12日に、東京では3月21日が14日に咲いてしまいました。ちなみに大阪では3月19日でした。どの道、今年の春もコロナ禍でさくら祭りや花見の宴会は中止となり、日本人の楽しみが奪われてしまいました。花見酒を愛する人にとっては「酒なくて何の己が桜かな」となったようです。

 東北の復興と日本経済の活性化を目標としていた真夏の「東京オリ・パラ」も一向に収束の見えないコロナ禍によって、海外からの観客を断念し国内だけの限られた入場者の下で開催されることが決まりました。管首相が第99代内閣総理大臣に就任したときの所信表明演説で述べた「人類がコロナに打ち勝った証として、また東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」との意気込みはすでに遠のいた気がします。

 海外からの観客を大量に見越して準備していたホテル・旅館や観光地、会場周辺の商店街にとっても大誤算となりました。まさに「弱り目に崇り目」ということです。料理の素朴な俚諺(りげん)でいえば“野鳥の献立”または“飛ぶ鳥の献立”というらしく、まだ捕まえていない鳥をあれこれ料理する方法を考えることで、皮肉な結果ともなれば当て外れなどいう生半可な言葉では表現できない事態が予測されます。

 まもなく爽やかな陽気の黄金週間を迎えますが、今年もソーシャルディスタンスとマスク会食を守り、感染防止に努めたいものです。

編集長 日比野隆宏

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2021年3月号編集後記

 昨年3月号の編集後記の書き出しは「一寸先は闇」(ちょっと先のことも全く予知できないことのたとえ)とあって、「新型コロナウイルス感染症」が世界中に蔓延し、一億一千万人以上の感染者と250万人の死者を出し1年後の今になっても収束していないという状況は想定できませんでした。感染拡大予防のために緊急事態宣言が二度も発出され、飲食業界のみならず日本経済に与えた影響は計り知れません。

 2月から国内でもようやくファイザー製のワクチン接種が始まり、優先接種の医療従事者から65歳以上の高齢者、基礎疾患のある方等、順次2回接種が実施されます。接種対象者には各自治体からクーポン(接種券)が郵送され、16歳以上の全国民が無料で受けられることになっています。

 平成23年(2011年)3月11日、宮城・福島・岩手県が巨大地震と大津波、原発破壊に襲われた「東日本大震災」。あれから10年がたちますが、完全復興にはほど遠い現状が報道されるのを見るにつけても大自然の脅威に圧倒されるばかりです。原発の問題もさることながら、地球温暖化の弊害が日本の春夏秋冬の原風景を少しずつ狂わせ、自然界の生態系までも脅かしているように思えます。

 今年の桜の開花予想は福岡の3月18日、東京の3月21日と言われていますが、いずれにしても昨年同様、今宵の“花見の宴”は密を避け時短の制限の中で行われます。桜花爛漫の春が一日も早く戻ってほしいものです。

編集長 日比野隆宏

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2021年2月号編集後記

 124年ぶりという2月3日の立春も間近に控え、近年では前日の節分に昔ながらの「福は内、鬼は外」を唱えて炒り豆をまく習慣よりも、海鮮などの具材を海苔で巻いた太巻きをその年の恵方(今年は南南東)に向かってかぶりつく「恵方巻き」の習慣が幅をきかせるようになりました。

 商魂たくましいスーパーやコンビニなどで「期間限定」にもかかわらず、作りすぎて大量に売れ残るという大量廃棄の食品ロス(フードロス)が社会問題となりました。数年前に農林水産省の行政指導があり、「貴重な食糧資源の有効活用」のため業界団体が大半を予約制に切り替えるようになりました。予約を募るチラシには「福を呼ぶ笑福巻き」と称し、定番の和風巻きは出汁を味わう具沢山の恵方巻き、北海道や三陸産のマグロ、ホタテ、エビ、サーモン等を用いた色とりどりの海鮮太巻きなど、切り口を見せた折り込み広告が満載です。

 年も改まり、コロナ禍でなかったらさぞ希望に満ちた一年を予測できたはずですが、新型コロナは世界中に1億人を超える感染者を出し、依然として衰えを見せません。国内のワクチン接種の実施計画が進められる中、あざ笑うように感染力の強いコロナ変異種が出現し、新たな市中感染の危険性をはらんでいます。緊急事態宣言の延長論が真実味を帯びるこの頃、自衛手段として二重マスクの着用や手洗い消毒、密を避ける行動でなんとしても感染から身を守るようにしたいものです。

編集長 日比野隆宏

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