調理師日誌

2023年2月号編集後記

日本料理の献立名に用いられる陰暦(月の満ち欠けを基準に作られた暦)二月の異称(別称)は如月(きさらぎ=更衣着すなわち寒いので衣を更に重ねて着る意)といいます。現在の暦では陽暦(太陽暦)に変わりましたが、転用して陽暦の二月にも使用されています。

因みに一月の睦月から如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走となります。なお、歳時記などでは他にも様々な異称があり、二月には令月、麗月(れいげつ)、雪消月(ゆきげづき)、梅見月、初花月、小草生月(おぐさおいづき)等が記されています。

2月11日は建国記念の日ですが、戦前は紀元節(きげんせつ)と呼び、辞典によると日本の紀元を日本書紀に記された神武天皇の即位した日で、明治5年(1872)にこの日が日本の始まった日と定めたという。敗戦によって紀元節が廃止され、昭和42年(1967)に「建国記念の日」として復活し、国民の祝日の一つになつています。

また食物年表によると明治5年1月に明治天皇が肉食奨励のため自ら牛肉を試食したとありますが、すでに明治初年には横浜や東京ですき焼き、牛鍋屋が相次いで開業していたといわれています。

3年越しに生活を脅かして来た新型コロナウイルス感染の制限も、国の方針で感染症法の二類から季節性インフルエンザ並の五類に移行し、5月の連休明けにも実施されることになりました。したがって医療費も全額公費負担から段階的に一部自己負担となるようです。

コロナが収束したわけではありませんので、ワクチンは今後も公費で接種することになるということのようです。

折しも物価の高騰に伴う賃上げ春闘を迎え、国内の社会的・経済的活動がⅤ字回復するほど甘くはないと思いますが、インバウンドによる外国人観光客の出足は好調のようです。これに伴って飲食業界の見通しもぜひとも明るくなってほしいものです。

編集長 日比野隆宏

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2023年1月号編集後記

謹賀新年

本年も会員皆様の変わらねご愛顧とご協カのほど
何卒よろしくお願い申し上げます。

2023年 元旦
編集部一同

コロナ禍の制限緩和により皇居の一般参賀も3年ぶりに行われる予定になっております。例年通り、日の丸の小旗が振られる中、世界平和と国民の幸福を願うお言葉を賜わることになるでしょう。

本来なら希望に満ちた年の初めの新年会によって多くの会館やホテルの宴会場が賑わうはずですが、未だ収束の見通しのつかない現状にあり、今年もワクチン接種とマスク着用の自粛ムードでスタートすることになります。

何はともあれ永朋舎にとりましては、創立30周年を迎える記念すべき年でありますが、会長の「年頭のご挨拶」にもありますように、今秋の記念式典は見送りとなりました。来年こそは正常な環境の中で盛大に開催できることを切に祈るばかりです。

今年の干支はウサギ年で「兎を見て犬を放つ」というのは「何事も失敗の後にやり直しても決して遅くはない」というたとえだそうです。失敗は成功のもととも言いますから、失敗の許されない料理もありますが、試行錯誤を重ねることで成功することが多いようです。

編集長 日比野隆宏

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2022年12月号編集後記

昨年12月号の出だし同様、2022年も残すところわずかとなりました。3年越しの本年も「コロナ禍に始まり」第8波の予感を抱かせながら「コロナ禍に終わる」年となりました。岸田内閣も経済を回す政策から、5月の連休より制限なしのコロナ対策となったのがせめてもの救いでした。

3年分を挽回するインバウンドが期待される外国人観光客の客足も、紅葉のシーズンとともに戻り始め、最大の観光地“京都”の混み具合が連日放映されました。観光地の復活ムードを含め、飲食業界にとっても朗報の契機となれば幸いなことです。

4年に一度のサッカー「ワールドカップ・カタール大会」が始まり、初戦の強豪ドイツに逆転勝ちし、1993年のイラク戦に破れた“ドーハの悲劇”を “ドーハの歓喜”に変えて、世界中を沸かせ興奮させました。
今回もベスト8をめざすその後の状況は、本誌が届く頃には結果がでてることになります。

年末恒例の2022年新語・流行語大賞が発表されました。(1)村神様(セリーグ優勝に導いたヤクルト村上宗隆選手。三冠王と56号の本塁打新記録)(2)キーウ(戦争の止まないウクライナの首都)(3)きつねダンス(札幌ドーム球場の日本ハムファイターズガール応援ダンス)(4)国葬儀(5)宗教二世(統一教会被害者救済新法案)(6)知らんけど(ツイッターで流行ったうざい言葉)(7)スマホショルダー(8)てまえどり(生協の店で食品ロスを減らすために賞味期限の近い商品を前に出す)(9)ヤクルト1000(不眠症や認知症に効果がある乳酸菌飲料)(10)悪い円安(空前の値上げラッシュに拍車をかけた急激な円安)以上がベスト10になりました。

会員の皆様にはくれぐれも“行く年来る年”(虎年から兎年へ)を健康に留意されて、ウィズコロナにめげない幸多き一年を迎えて下さい。

編集長 日比野隆宏

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2022年11月号編集後記

秋の一日、ある殿様が家来を連れて江戸の郊外の目黒まで馬の遠乗り(鷹狩りとの説もある)に出て、昼時に空腹を覚えた頃、魚を焼く匂いがするので、家来に尋ねると「さんまを焼いている匂いでござります」と申すも殿様にはなんのことかわからぬと申され、「さんまとは下魚でお殿の口に合うようなものではござらぬ」といいつつも、匂いのする一軒の農家に入ると、家中もうもうと煙をたて、さんまの煙を充満させております。

殿様がぜひにと所望するので差し上げたところ「これは珍味じゃ」と大層喜ばれたという。お屋敷に戻った殿様はあの時の「さんまの味が忘れられぬ」と、毎日さんまを所望されるので家来は手を尽して最上等のさんまを取り寄せ、お体にさわるといけないと、脂や小骨をきれいに取り除き、蒸して上品な吸物に仕立てて進めると、殿様は「恋しかったさんまよ」と一口召し上がり、「これがさんまか?いずれから取り寄せたのじゃ」「日本橋魚河岸でござります」「それはいかん。さんまは目黒にかぎる」。

古典落語の「目黒のさんま」に因んだ目黒のさんま祭が10月9日、3年ぶりに開催されました。豊漁の時は岩手や宮城の魚港から7,000匹も提供されたことのあるサンマも、折からの水揚げ不漁で今年は1,000匹の定数に8,734人の応募があったそうで、抽選に恵まれた人が塩焼のサンマにかぼすを搾り、新物を味わうことが出来たようです。サンマは秋刀魚と書き、体型は細くスマートで背は黒紫色、体側は帯状に銀白色を呈し、いかにも刀を思わせる漢字を当てたようです。美味で脂も多く、江戸時代から「さんまが出るとあんまが引っ込む」と言われて秋の味覚として庶民に親しまれてきました。

現代では生活習慣病を予防するEPAやDHAの成分が豊富でビタミン、カルシウム類の栄養価も高く、ぼけ防止や子どもの成長に適した健康食品とされています。

目下、天ならぬ物価が高く、馬も痩せる思いで、さんまに限らず秋の値上げは庶民の台所を直撃しています。

編集長 日比野隆宏

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2022年10月号編集後記

9月27日、去る7月8日に奈良県で凶弾に倒れた安倍元首相の国葬が日本武道館で行われました。国内外から約4,300人が参列し、葬儀委員長の岸田首相が追悼の辞を述べ、友人代表の菅前首相は安倍氏が二度日の首相を目指す時に、銀座の焼き鳥屋で背中を押して決断させたことや安倍氏が読みかけていた本(山県有朋)の一説にある短歌を引用し、声を震わせながら弔辞を読み上げると、しめやかな場内に拍手が起こりました。

会場付近の九段坂公園の一般献花には長蛇の列ができ、故人に別れを告げました。折しも、9月19日に英国エリザベス女王の荘厳な国葬の映像がBBCを通して世界中に配信されたばかりでした。国葬として比較する同次元の事柄ではありませんが、賛否両論のある中で挙行された今回の日本の国葬は少なからず禍根を残すことになるようです。

思い起こせば33年前(昭和64年2月24日)の昭和天皇の「大喪の礼」は国事として国民の殆どが喪に服し、皇居から葬場殿の儀が営まれる新宿御苑に向かう沿道で20万人以上が見送り、葬儀には国内外から9,800人が参列したと言われています。

新宿御苑と言えば、安倍元首相の桜を見る会で物議を醸した場所でもあり、「年々歳々花相似たり歳々年々人同じからず」と言われますが、桜を見る会には統一教会の関係者も招待されていたようで、この問題は相当根深い話です。

10月10日は目の愛護デー。ある新婚夫婦の夫が妻に目玉焼を頼んだら、「一つですか?二つですか?」と聞くので「一つでいいよ」と答えると、やがて新妻は片方の目に眼帯を掛けて皿を運んできた。夫は皿の上の目玉焼を見て気絶したという怖い話。もっとも中国料理には「蚊の目玉」のスープがあるという。蚊だけを食べるコウモリの糞から集めるそうで、いくら食欲の秋でもいただけませんね。

編集長 日比野隆宏

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