調理師日誌

2017年4月号編集後記

 「花金」という30数年前のバブル期にできた流行語がありました。「花の金曜日」を略した言葉です。週休二日制が導入された時期に、月曜日から金曜日までの一週間の務めが終わり、土・日の連休を控えウキウキする気分にさせる金曜日との解釈がなされていました。それ以前には明治以降の「半ドン」という用語(現在は死語)がありました。半ドンタク(オランダ語の日曜日が転じて休息日の意)の略。当時、土曜日の勤務は午前中だけで、公務員や多くのサラリーマンにとって午後の自由時間は趣味やデート、レジャーで過ごせる実に楽しみな時間であったとか。

 このほど政府が2月からスタートさせた「プレミアムフライデー」は、企業全体が実施するにはまだまだ時間がかかりそうですが、月末の金曜日のみ午後三時の退社で、買物や家族との外食、旅行などによる消費拡大をめざして実施されるものです。プレミアムフライデーの過ごし方の調査では旅行が最も多く、従来の週末二日より半日近く多くなるため近距離の海外ツアーも見込まれるようで、旅行会社は色めき立っているようです。企業や団体の80%が前向きに検討しているといわれ、勿論、外食産業にとっても大いに反映される事でしょう。

 時に、海外旅行も格安航空券などにまどわさせると、てるみくらぶのような詐欺まがいの商法に巻き込まれる恐れがあります。信用と実績のある大企業ならいざ知らず急成長の零細企業は要注意ということかもしれませんが、電化製品のシャープや東芝などの超一流会社が身売りする時代ですから、森友学園の籠池氏ではないですが兎角この世はハシゴをはずされかねません。

編集長 富田正藤

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2017年3月号編集後記

 春は名のみの風の寒さや 谷の鶯 歌は思えど 時にあらずと 声も立てず-と歌われた早春賦(大正時代に作られた)という唱歌も懐メロとなり、全く耳にすることがなくなりました。もはや明治・大正どころか昭和も遠くなりました。すでに平成になって30年を迎えようとしていますが、昨年来天皇陛下のお気持ちとして元気なうちに退位し、現皇太子に継承したいとの意思を表明されています。皇室典範では崩御以外認めていない「生前退位」のことが国会で議論されており、一代限りとするのか制度化するのかで意見が割れているようです。いずれにしてもこれが実施されると元号が平成からまた新しい名称に変わります。江戸時代後期以降、およそ二百年間天皇による譲位は行われておりませんが、昭和54年に制定された元号法では、「元号は皇位の継承があった場合に限り改める」とされており、陛下は東京五輪を前に数年内の譲位を望まれているといわれています。

 日本人の4人に1人が65歳以上の高齢化社会となり、厚労省の発表によれば2015年の平均寿命が過去最高を更新しました。5年に1度の国勢調査に合わせた調査で男性は80.75歳、女性は86.99歳となり、主要7ヵ国(G7)の中では男女とも最も高いという。138年前の1891年に行われた調査では男性が42.8歳、女性が44.3歳と記録されており、驚異的な伸びといえます。時代や社会的背景、栄養、食糧事情、医学の進歩、生活環境などの総合的な変化による改善の結果でもあるようです。食に従事する私達も常に責任の一端を担っているわけです。

編集長 富田正藤

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2017年2月号編集後記

 昨年8月の幕開けから続いている東京都の小池劇場“豊洲編”も一向に幕が下りる気配がありません。地下水調査で発がん性物質ベンゼンの数値が79倍も検出され、その上年間収支で100億円の赤字が出るという試算まで公表されては「築地女将さん会」も黙ってはおりません。何よりも食の安全性を優先する都民ファーストの都知事を援護し、移転中止の署名活動も始まるようです。

 気象条件が温暖化も含めて地球規模で変化し、生物の生態系を脅かしているように思えます。とりわけ海水温の影響による漁業では太平洋のスルメイカの不漁が深刻です。イカ飯やイカ素麺で知られる北海道では新幹線の開通で観光客が激増し、年間200万人以上訪れる函館名物の「朝市」人気も上々のはずですが、今年はここ十年で最も少ない不漁のせいで、最大の呼び物である水槽のスルメイカを釣り上げ、その場で味わう「烏賊の釣堀」が開店休業に追いやられているそうです。イカの水揚げ日本一といわれる青森県八戸港も前年比30%以上も激減し、地元の小型イカ釣り船で通常は20杯入りで300箱揚げるのが、今年は10箱止まりと嘆いているという。スルメイカが高騰し、塩辛も店頭に並ぶ数が減り、値段も高くなっています。

 イカサマではありませんが、太平洋の向こう側では時ならぬトランプ旋風が吹き荒れています。大統領令を連発し、何もかもツイッターで攻撃するという新種のエース登場で、米国のみならず世界が変わるような雲行きです。

編集長 富田正藤

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2017年1月号編集後記

 政府の観光事業計画によると、昨年の外国人観光客2,000万人を基準にして東京五輪の2020年には4,000万人を目標にし、経済効果8兆円を目論んでいます。これが2030年には6,000万人を目指し、15兆円という夢のような数字を描いているようです。その中には物議を醸している問題のカジノの収益?も見込まれているようでまさに捕らぬ狸の皮算用の可能性もあります。

 海外ではすでにギャンブル依存症や犯罪の増加、青少年への悪影響等によって下火の傾向にあり、ラスベガスに次ぐ米国二番目のカジノ都市アトランティック市などは岐路に立たされているようです。日本にはそのようなリゾート施設に頼らない四季折々の自然や風土、温泉地、世界遺産の神社仏閣、歴史的建造物、伝統工芸、伝統芸能、祭り等々魅力的な観光資源があふれています。

 それにもまして人気の高い日本食があります。本物志向の日本料理は勿論のこと、地方創生にもつながる地産地消の郷土料理は国内旅行者以上に外国人には感動を与えるようです。料理人の出番がますます多くなりますように初詣と行きましょう。酉年を迎えて取りあえず神社の鳥居をくぐりましょう。大願成就、商売繁盛、家内安全。

編集長 富田正藤

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