調理師日誌

2018年1月号編集後記

 東京都中央卸売市場の築地市場から豊洲市場への移転問題も築地再開発の構想を掲げることでようやく決着し、土壌汚染による追加安全対策工事を経て、本年10月11日(木)に開場することになりました。

 二年前の都知事選を制した小池百合子知事による豊洲移転延期宣言から三年を費やした膨大な費用の問題も含め、前途多難な船出となりそうです。一方の築地跡地には再開発構想として豊洲と築地を結ぶ食のゾーン「食のテーマパーク」を創設するという提案もあります。

 〝銀座から一番近い築地場外〟と称され現在地に残る450店舗からなる築地場外市場は、一昨年オープンした生鮮市場「築地魚河岸」はじめ、新たな未来に向かって世界に名だたる築地の活気と賑わいを取り戻し、本来の「プロの街」としてのプライドを継承すべく、「築地ブランド」の伝統を守っていこうとされています。

 築地市場は、江戸時代から続いた日本橋魚河岸が大正12年(1923年)の関東大震災によって壊滅し、昭和10年(1935年)に築地本願寺に隣接する築地海軍技術研究所用地に新たに開設されたのが始まりでした。

 歴史は繰り返しますが、永朋舎も二十五周年を迎えます。会員の皆様には最良の年でありますようにお祈り申し上げます。

編集長 富田正藤

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2017年12月号編集後記

 相撲界が土俵の外の傷害事件で揺れに揺れ社会問題になっています。伊勢ケ浜部屋の横綱日馬富士が同じモンゴル人力士で貴乃花部屋の貴ノ岩に暴行を加え、怪我をさせたことによる不祥事で、貴乃花親方が傷害事件として警察に訴えたことから孤軍奮闘で理事会とももめています。ついに責任をとって日馬富士は引退しましたが、事件の幕引きとはならず、文字通り水入り相撲となりそうな状況です。

 相撲界(角界)の不祥事といえば、モンゴル人の先輩横綱朝青龍も一般人への暴行事件で引退しています。国技であった相撲も今ではモンゴル人力士にお株を奪われ、無敵の横綱白鵬に40回目の優勝を記録されています。今年の2月に日本人力士として19年ぶりに横綱昇進を果たした稀勢の里も怪我の影響で休場が多く、完全復帰が危ぶまれています。

 ところで「相撲」の語源は大和言葉の「すまふ」に由来するといわれ、争うこと、抵抗することを意味する動詞が変化し「すもう」となったといわれています。漢字の 「相撲」はお釈迦様の一代記(経本)にでてくる取っ組み合い(格闘)をインド人が漢訳するときに相撲の文字で表現したと記されています。格闘技も源流をたどれば日本書紀の力くらべどころか古代バビロニアの青銅器やエジプトの壁画に描かれているといいますから、人間も動物と同じ習性をもって生き抜いてきたわけです。

 来年は成年。思わぬ幸運にあたるよう愛犬と一緒に大いに歩きましょう。

編集長 富田正藤

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2017年11月号編集後記

 衆議院ならではの宝刀を抜いた安倍首相による〝冒頭解散〟は野党にとって奇襲作戦も同然でした。風雲急を告げる大型台風21号が日本列島を襲う悪天候の中、解散総選挙が強行されました。選挙運動も政策論争より誹誘中傷合戦に明け暮れ、自民党小泉進次郎氏全国行脚の独壇場が功を奏し、自民党が全465議席のうち単独で284議席を獲得、自公で300議席を超えるという驚異的な数字で与党の圧勝に終わりました。

 それに引き換え、安倍独裁政権を倒そうと「日本をリセットする」と宣言し、にわかに野党第一党を目指し「希望の党」を結成した小池百合子代表は、民進リベラル派を傲慢にも「排除する」と発言した途端に国民の顰蹙(ひんしゅく)を買い、立憲民主党にも及ばず惨敗を喫する結果となりました。それにしても、昨年夏の都議選を席巻した「都民ファースト」の勢いはどこへやら、今後の都政への影響が懸念されます。

 選挙権を18歳に引き下げ、期日前投票数が大きく伸びたにもかかわらず、台風のせいとはいえ、戦後2番目の低投票率53.68%に止まり、国民の約半数が選挙権を放棄したことになります。この際、一人でも多く投票できるような方法を考案して欲しいものです。

 晩秋ともなれば温泉宿が恋しくなる季節ですが、日本の温泉法では泉温が25℃以上か溶存物質を1kg中に1g以上含有するいで湯を温泉といい、鉱泉は鉱物またはガスを多量に含む泉水を称しており、狭義には冷泉だけを呼んでいます。

 最新人気の「にっぽんの温泉100選」によると(1)草津(2)指宿(3)下呂(4)別府八湯(5)有馬(6)道後(7)湯布院(8)登別(9)黒川(10)城崎がベスト10で、以下和倉、箱根湯本、高山、玉造、伊香保、奥飛騨、月岡、蔵王、嬉野、山城と続いています。

編集長 富田正藤

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2017年10月号編集後記

 春の桜狩りに対し、秋は紅葉狩りといい古来より日本人は紅葉の名所を訪ね歩き、鑑賞し、写真や絵にしたり、また短歌や俳句を詠んだりする習慣があります。

 絶壁の下のみちゆく紅葉狩り(西村麦風)

 秋の茸狩り(たけがりとも、きのことりともいう)もまた行楽の一つです。山林に自生する初茸、舞茸、椎茸、湿地茸など、食用きのこを採取することですが、本来は松茸狩りのことで、かつて関西では10月初旬に松茸山の山開きをする地方もありました。「香り松茸、味湿地」といわれるように本湿地は美味しいものです。とはいうものの、姿形といい独特の風味は松茸に優る物はなく、野趣豊かなお馴染みの焼松茸に土瓶蒸し、松茸飯などは家庭ではなかなか味わえない高級料理の一つです。

 茸は茸でもまぼろしの茸と呼ばれる岩茸(イワタケ)もまた料理屋でしかお目にかかれない超高級品です。乾燥した物を戻して使います。岩手県や秩父地方の山奥の標高1,000mの断崖絶壁にはえており、岩場に張り付くように生えているので採取は容易ではありません。茸とはいっても地衣類に属しており、成長は驚くほど遅く1年に1ミリ位といわれています。雨天のあとの水分を含んだ状態のものを地元の人が命がけで採取するという。多糖類のグルカンを含み、制ガン作用があるといわれ、昔から薬として扱われてきました。

 最近になって和の食文化が欧米化した学校給食にも受け入れられる傾向にあるようです。内閣府が提唱している「食育推進基本計画」が理解されて地産地消の掛け声の下に、国民の食生活にも影響を与えており、健康的な和食が見直されて学校給食にもシフトされる時代が来ることは素晴らしいことです。

編集長 富田正藤

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2017年9月号編集後記

 東京の8月の日照時間が1890年の観測開始以来、83.7時間という史上最短を記録しました。東北仙台地方も同様の雨天続きでした。小・中・高生の夏休みといえば海や山にくりだしてアウト・ドア・ライフを満喫する季節でもあります。夏祭りや花火大会が真夏の日本列島を盛り上げるはずなのに今年の8月は異なりました。稼ぎ時の海水浴場では海の家が軒並み閑古鳥が鳴き、稲作では最も日照りが必要な時期であり、野菜や果物にも灼熱の太陽が必要です。この結果、東日本では野菜が高騰し、実りの秋が遠のく地方が続出しました。度重なる豪雨に見舞われた九州を除く西日本では比較的晴れ間も出て、熱闘甲子園では花咲徳栄高校が雨天の続く埼玉県に晴れて初の優勝旗をもたらしました。

 古来より日照りを乞う祈りは少なく、むしろ日照りに悩む農民の「雨乞い」の祈りが、雨乞い唄や雨乞い踊り、雨乞い小町、雨乞いの使い等の祈りの表現に残されています。台風による河川の氾濫や洪水の被害よりも旱魃の被害が圧倒的に多かったようです。現に世界的な傾向として食糧支援が絶えないアフリカのエチオピア、マラウイなどは深刻な事態が続いています。アジアではカンボジアやスリランカなどは、4~50年ぶりの旱魃に悲鳴を上げていると報道されており、水力発電に頼るスリランカでは死活問題といえます。河川や池沼が干上がれば飲料水も枯渇し、地域によっては農業のみならず漁業も絶えてしまうという死活問題になっています。

 食欲の秋というよりも味覚の秋が訪れます。日本料理も旬の食材に困ることはありません。

 松茸の山かきわくる匂ひかな(支考)

 今では夢のような名句です。

編集長 富田正藤

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