調理師日誌

2017年9月号編集後記

 東京の8月の日照時間が1890年の観測開始以来、83.7時間という史上最短を記録しました。東北仙台地方も同様の雨天続きでした。小・中・高生の夏休みといえば海や山にくりだしてアウト・ドア・ライフを満喫する季節でもあります。夏祭りや花火大会が真夏の日本列島を盛り上げるはずなのに今年の8月は異なりました。稼ぎ時の海水浴場では海の家が軒並み閑古鳥が鳴き、稲作では最も日照りが必要な時期であり、野菜や果物にも灼熱の太陽が必要です。この結果、東日本では野菜が高騰し、実りの秋が遠のく地方が続出しました。度重なる豪雨に見舞われた九州を除く西日本では比較的晴れ間も出て、熱闘甲子園では花咲徳栄高校が雨天の続く埼玉県に晴れて初の優勝旗をもたらしました。

 古来より日照りを乞う祈りは少なく、むしろ日照りに悩む農民の「雨乞い」の祈りが、雨乞い唄や雨乞い踊り、雨乞い小町、雨乞いの使い等の祈りの表現に残されています。台風による河川の氾濫や洪水の被害よりも旱魃の被害が圧倒的に多かったようです。現に世界的な傾向として食糧支援が絶えないアフリカのエチオピア、マラウイなどは深刻な事態が続いています。アジアではカンボジアやスリランカなどは、4~50年ぶりの旱魃に悲鳴を上げていると報道されており、水力発電に頼るスリランカでは死活問題といえます。河川や池沼が干上がれば飲料水も枯渇し、地域によっては農業のみならず漁業も絶えてしまうという死活問題になっています。

 食欲の秋というよりも味覚の秋が訪れます。日本料理も旬の食材に困ることはありません。

 松茸の山かきわくる匂ひかな(支考)

 今では夢のような名句です。

編集長 富田正藤

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2017年8月号編集後記

 梅雨明け前と明けてからも、真夏日の高温注意報と局地的なゲリラ豪雨、台風が追い打ちをかけるという異常気象が日本列島を覆っています。政局もアベノミクスで高い支持率を維持してきた安倍内閣も、鳴り物入りで入閣した女性大臣はじめお友達内閣などと揶揄されて、森友・加計問題が発覚してからは国会がにわかに紛糾、ついに安倍内閣に対する世論の支持率が危険水域の30%を割り込み、8月早々に第三次内閣改造を余儀なくされてしまいました。

 北朝鮮ではミサイル発射が米国本土への射程距離を拡大しエスカレートする一方で、さすがのトランプ大統領もしびれを切らし、次の手を打つタイミングを計っているのではと危惧する向きもあります。

 2020年の東京オリンピックの開催期間が日本で最も暑い7月24日(開会式=新国立競技場)から8月9日の閉会式まで組まれていますが、8月2日の女子マラソン、9日の男子マラソンなどは猛暑の中でどうなることでしょうか。53年前の第18回東京五輪は最も季候の良い天高く馬肥ゆる10月10日の開会式でした。

編集長 富田正藤

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2017年7月号編集後記

 今年の天候は例年になく不順で地域を問わず初夏だというのに、30度を超える真夏日が何度もありました。この分では7月以降の梅雨の合間や梅雨明けと共に高温注意報の発令が大いに気になります。地球温暖化防止は21世紀以降の地球と人類を守るために世界190ヵ国が京都議定書やパリ協定に参加し、現状の経済活動を続けた場合、100年後に4度前後上昇するという予測のもとに2度未満に抑えること(18世紀の産業革命以前の気温を基準として)を目指して行われています。具体的にはCO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスの排出量を減らすという協定を守ることになりますが、このほど途上国との不公平感を理由に、先進国として最も影響力のある国のアメリカがトランプ大統領の独断でパリ協定からの離脱を表明し、大きな問題となっています。

 石油、石炭等の化石燃料を使用し、CO2を大量に排出している国は中国とインドで全体の28%を占めているといわれています。一方で、大気汚染の元凶となっている中国の微小粒子物質PM2.5などは日本への影響も見過ごせません。自然界への影響が現れて、すでに気温や降水量の変化による農作物、また海水温の上昇で魚介類の生態系に被害が及んでおり、地球規模の食料不足の不安も広がりつつあります。

 「笹の葉さらさら のきばにゆれる お星さまきらきら きんぎん砂子」と歌われる七夕の歌も今は昔の風景となりました。商業的には平塚と仙台の七夕祭が有名ですが、天の川をイメージさせる食べ物では素麺があり、料理では豆乳を固めた滝川豆腐の椀種も風情があります。今年の夏の祭典は幻想的な蛍が当会青年部のテーマになっております。涼を呼ぶ夏の風物詩の一つです。

編集長 富田正藤

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2017年6月号編集後記

 六月の雨は梅雨前線が発達し、停滞することでひとしきり雨をもたらすことになります。この時期の雨量によって稲や作物が生育し、やがて実り多き物になるわけです。一方では果樹にも影響を及ぼし、青梅を実らせ黄熟させることになります。このように梅が熟す頃の雨なので梅雨と書き、湿気が多くて徽(かび)が生えるところから微雨とも書き、いずれもバイウまたはツユと読みます。一年で最も鬱陶しい気候となり、ジメジメとして健康上は誠に不快な季節となります。日本では昔からこの時期に採取した梅を用いて保存食の梅干しを作ります。熟し切らない青梅を数日間塩漬けにしたあと、日に干して赤紫蘇を加えて漬け直します。さらにむしろや戸板に並べて天日に晒し、三日三晩、昼には干し、夜には梅酢に漬け戻すことを繰り返すと程良くしわの寄った梅干しが出来上がります。好みによっては天日に干さないでカリカリ梅で食べることもできます。

 梅干しにはその強烈な酸味から殺菌効果や保存効果が認められ、弁当の白い御飯に梅干しを一個詰めて日の丸弁当と称し親しまれてきました。近年では疲労回復から生活習慣病、特にガンの予防にも効果があるといわれ、胃がんの原因とされているピロリ菌に対しても一日二個程度の摂取で抑制することが出来るといわれています。梅干しに含まれる成分が糖尿病を促進する酵素αグルコシダーゼを抑制することも証明されており、最近ではバリニンという成分が脂肪燃焼効果があることもわかりました。どんなサプリメントよりもダイエット効果、夏パテ防止効果がある健康食品であることを再認識し、毎日一個食べるようにしましょう。

編集長 富田正藤

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2017年5月号編集後記

 今や国民の80%が非喫煙者といわれますが、新幹線全面禁煙などで世の愛煙家には肩身の狭い時代になっており、厚労省の方針によると受動喫煙防止策を罰則付きで強化するという健康増進法改正案が発表されました。学校や病院の敷地内、官公庁や大学、運動施設などは屋内禁煙、バスやタクシー、飛行機などは車内(機内)禁煙とし、いずれも喫煙専用室の設置は認めないという厳しいもので、一部公共の福祉に反しない限りに於いては尊重されるとして、プライベート空間は対象外であり、限定したもので、飲食店のレストランや居酒屋またホテル・旅館も喫煙専用室が認められるようになっています。

 いずれにしても、飲食店で4割、職場や遊技場で3割の非喫煙者が受動喫煙の被害にあっており、受動喫煙がなければ乳幼児を含め年間1万5千人の命が助かっているという統計がでているようです。たばこ(煙草)は1492年コロンブスがアメリカ大陸を発見した時、インディアンが栽培していたものを医薬品としてヨーロッパに持ち込んだのが始まりで、17世紀初頭には全ヨーロッパから東洋、日本にまで普及したと伝えられています。

 煙幕を張るわけではありませんが、すでに5世紀頃、メキシコのマヤ文明では太陽を崇拝し、僧侶がパイプでたばこの煙をくゆらし、祭壇に向けて吐き、その煙や葉の汁で病気を治しており、喫煙以外に嗅ぎたばこ、噛みたばこ、葉巻たばこも利用されていたといいます。また中国では16世紀にマラリアが流行した時、喫煙していた兵士だけが無事であったため特効薬とされて急速に広まったともいわれています。人類とたばこの関係は肺がんとの因果関係以前に悠久の歴史と文化がありました。

編集長 富田正藤

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