調理師日誌

2017年10月号編集後記

 春の桜狩りに対し、秋は紅葉狩りといい古来より日本人は紅葉の名所を訪ね歩き、鑑賞し、写真や絵にしたり、また短歌や俳句を詠んだりする習慣があります。

 絶壁の下のみちゆく紅葉狩り(西村麦風)

 秋の茸狩り(たけがりとも、きのことりともいう)もまた行楽の一つです。山林に自生する初茸、舞茸、椎茸、湿地茸など、食用きのこを採取することですが、本来は松茸狩りのことで、かつて関西では10月初旬に松茸山の山開きをする地方もありました。「香り松茸、味湿地」といわれるように本湿地は美味しいものです。とはいうものの、姿形といい独特の風味は松茸に優る物はなく、野趣豊かなお馴染みの焼松茸に土瓶蒸し、松茸飯などは家庭ではなかなか味わえない高級料理の一つです。

 茸は茸でもまぼろしの茸と呼ばれる岩茸(イワタケ)もまた料理屋でしかお目にかかれない超高級品です。乾燥した物を戻して使います。岩手県や秩父地方の山奥の標高1,000mの断崖絶壁にはえており、岩場に張り付くように生えているので採取は容易ではありません。茸とはいっても地衣類に属しており、成長は驚くほど遅く1年に1ミリ位といわれています。雨天のあとの水分を含んだ状態のものを地元の人が命がけで採取するという。多糖類のグルカンを含み、制ガン作用があるといわれ、昔から薬として扱われてきました。

 最近になって和の食文化が欧米化した学校給食にも受け入れられる傾向にあるようです。内閣府が提唱している「食育推進基本計画」が理解されて地産地消の掛け声の下に、国民の食生活にも影響を与えており、健康的な和食が見直されて学校給食にもシフトされる時代が来ることは素晴らしいことです。

編集長 富田正藤

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