調理師日誌

2019年11月号編集後記

 前号のこの欄で房総を襲った台風15号の大災害にふれたばかりなのに、その後毎週のように巨大台風が発生し、追い打ちをかけて19号と21号の特殊な雨台風にやられ、長野県の千曲川や福島県の阿武隈川、茨城県の那珂川等全国71の河川支流が氾濫、または堤防が決壊し、広域の浸水被害に見舞われました。被害を受けられた地域の皆様には改めてお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧をお祈り致します。

 このほど日本人で27人目のノーベル賞が決定し、小型で高性能のリチウムイオン電池を開発した吉野彰(あきら)旭化成名誉フェローが化学賞を米国の教授と共同受賞されました。リチウムイオン電池はすでにスマートフォン、パソコンをはじめ電気自動車や航空機、国際宇宙ステーションまで広く利用されており、今後は太陽光など再生可能エネルギーを蓄えて、化石燃料に頼らない社会の実現に必要不可欠のものとされています。授L賞式は12月10日にスウェーデンのストックホルムで行われます。

 5月1日の譲位による改元で平成から令和となり、天皇陛下に即位されたことを世界に宣言するための「即位礼正殿の儀」が10月2日、各界の代表者と191ヵ国の代表者ら内外から2千人の参列者が集う中、皇居正殿・松の間にて行われました。天皇陛下は高御座(たかみくら)に立ち、国民の幸せと世界平和を願い、日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすとお言葉を述べられました。

 また夜の饗宴の儀は各国の王族や大統領を招き、和食中心の献立(前菜・酢の物・焼物・温物・揚げ物・加薬飯・吸物)で催されたことが印象的でした。

編集長 日比野隆宏

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2019年10月号編集後記

 去る9月11日、永田町では第四次安倍内閣の顔ぶれが決まったが、2日前に千葉県の南房総を台風15号が襲い、前代未聞の最大瞬間風速57.5mを記録する大災害に見舞われていました。

 観測史上最強クラスの台風で、鉄塔や山林の樹木が倒れ、電線を切断したため93万戸が停電、水道とともライフラインを寸断し、数週間にわたり被害地の市民生活を脅かしました。また、農作物や畜産物にも甚大な被害をもたらし、自然災害の恐ろしさを思い知らされました。この度の台風で災害に遭われた地域の皆様にはお見舞いを申し上げますと共に一日も早い復旧をお祈り致します。

 スポーツの秋にふさわしく、今年はラグビーの第9回W杯(ワールドカップ2019)日本大会が9月9日より11月2日まで全国各地で開催され、熱戦を繰り広げています。

 日本は一次リーグA組ですでにロシア、アイルランドの強豪を破り、8強による決勝トーナメント進出を目指し大健闘中です。プロ野球もセの巨人とパの西武がリーグ優勝を果たし、それぞれCS(クライマックスシリーズ)の第一ステージで勝ち上がったチームと10月9日からの最終ステージを迎えることになります。

 いよいよ10月から消費税が8%から10%に増税されます。但し、生活必需品の食料品や新聞は8%の据え置きで、軽減税率制度が低所得者対象を目的として導入されますが、その対象品目となると複雑怪奇で混乱のもとになりそうです。キャッシュレス時代への奨励なのかカード支払いによるポイント還元制などもあり、仕組みがあまりにも複雑過ぎるようです。

編集長 富田正藤

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2019年9月号編集後記

 落語の「目黒のさんま」に因んだ「目黒のさんま祭り」が今年も9月8日に巡ってまいります。目黒駅東口の商店街で行われ例年、3万人を超える人で賑わうそうです。さんまは岩手県宮古市から7千匹、すだちは徳島県から1万個、大根は栃木県那須塩原市から5百本、備長炭は和歌山県みなべ町から取り寄せて豪快に振る舞われます。早朝から参加者の行列ができ、待ち時間も最長5時間にもなるという。

 ところで肝心のサンマ漁は、去年の同じ時期の水揚げと比較して、今年は昨年の約1割しかないという前代未聞の不漁であると報道されています。水揚げが少ない上に漁場ははるか遠くの公海で、魚体も小さく三重苦の有様で関係者を大いに悩ませています。(一昔前は七輪の炭火で煙を立てて焼いたものである)

 焼きたての秋刀魚は柚子と大根おろしと醤油ではらわたの苦味と共に食べるのが一番です。今年は一般庶民の秋の味覚も奪われかねません。この際、さんま祭りに出向いて並んで待って食するだけの価値はありそうです。

 「秋刀魚が出るとあんまが引っ込む」という俗諺があるように栄養価の高い魚でもあります。「さんま苦いかしょっぱいか」サンマ漁の発祥の地「和歌山県」で育った佐藤春夫の名作「秋刀魚の歌」も思い浮かべる人はいない時代になりました。

 サンマに限らずスルメイカ、サケ、マサバ、カツオなどの主要魚種も軒並み不漁と伝えられており、10月からの消費税10%は軽減税率のややこしい問題もあり、飲食業界にとっては慣れるまで時間がかかりそうです。

編集長 富田正藤

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2019年7月号編集後記

 昨年12月に国際捕鯨委員会(IWC)を脱退した日本ではこのほど31年ぶりに商業捕鯨を再開しました。IWCは国際捕鯨取締条約に基づき鯨資源の保存及び捕鯨産業の秩序ある発展を図ることを目的として1948年設立され、日本は1951年に加入し、1986年に商業捕鯨を禁止されて以来、捕獲数を制限した年間596頭の調査捕鯨による捕獲活動を続けていました。

 今回の脱会により、7月から12月までの半年間はミンククジラ52頭、ニタリクジラ150頭、イワシクジラ25頭と設定されました。対象海域も我が国の領海及び排他的経済水域に限定され、南極海・南半球では調査捕鯨を含め捕獲は行わないことになっています。

 クジラといえば日本では明治時代までイサナ(勇魚)と称し魚として扱われ、セミクジラが珍重されて主産地の九州、四国、紀州地方では早くから食されていました。明治年間には京阪地方で鯨鍋として食べられるようになり、鯨肉と水菜のはりはり鍋は大阪の郷土料理にもなっています。黒皮のついたさらし鯨を食べていた関東で鯨鍋が食されるようになるのは大正末期頃といわれています。鯨の尾の付け根の霜降り肉(尾の身)は刺身にして最も美味な部分。尾羽は尾羽毛ともいいさらし鯨に用いられます。

 レバ刺しも出る都内の専門店「元祖くじら屋」は昭和25年から70年くじら料理をコースで提供しており、さらなる100年目を目指して商業捕鯨の再開を機に道玄坂に移転するようです。

 黒潮の騒ぐ匂ひや鯨追ふ(田中化生)

編集長 富田正藤

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2019年6月号編集後記

 WHOの発表によると男女平均84.2歳で2018年度世界一位の長寿国に返り咲いたニッポンは今「人生100年時代」を想定して暗に自助努力を呼びかけているようです。

 老い先の長い?老後を暮らせる蓄え即ち資産寿命をどうのばすかが問題となりますが、この問題には国として年金支給額の維持が困難になるためと会社にとっても退職金を確保することがむずかしくなるためといわれています。金融庁の報告書案では、夫65歳・妻60歳以上の夫婦が年金生活で20年以上生きるためには蓄えが現状2,000万円は必要になると試算されています。一方では65歳以上の認知症の人は2030年には830万人(2012年で462万人)になると見られています。

 「人間わずか五十年」という言葉を口にしていた織田信長は不覚にも家臣明智光秀による本能寺の変で自刃、享年48歳でした。「人生七十古来稀なり」との名言は中国唐の詩人杜甫の言葉で長寿祝いの古稀の由来になっています。信長の一生ではありませんが「人生朝露の如し」(人の一生ははかなくもろい)という人生観が主流であり、それだけに古来より不老長寿の妙薬を探し求めたり、仙人の住む不老不死の蓬莱山に思いを寄せ、七福神の寿老人に願掛けをする人間は今でも絶えません。

 今年のサラ川(サラリーマン川柳)の入選作の中に、「いい数字出るまで計る血圧計」、「やせなさい 腹にしみいる医者の声」、「下腹が気づかぬ内にひょっこりはん」があり、過去には「皮下脂肪資源にできればノーベル賞」という一位になった作品もあります。

 何よりも長寿に必要なのは健康です。健康を保つには本来の日本食がふさわしいと思いますが、梅雨時は食中毒が大敵です。念には念を入れて細心の注意を心がけましょう

編集長 日比野隆宏

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