調理師日誌

2024年3月号編集後記

「能登半島地震」による被災地の復旧も困難を極めており、避難生活を余儀なくされている方々への仮設住宅の着工も急がれています。ライフラインの浄水場や水道管の補修工事も難航し、断水で未だに不自由な生活を強いられている地域が多いようです。

3月11日は13年前の東日本大震災が発生した日です。巨大津波による行方不明者が現在も2,500人を超えると言われ、原発事故による汚染水(海洋に放水するのは処理水)の問題をかかえながら地道な復興事業が続いています。

2月に春一番が吹き、暖冬の影響で今年の桜の開花は随分早まりそうです。昔からお花見につきものは花見団子で、春の色を表した薄紅色、白、草色の三色団子です。3月3日の桃の節句に供える菱餅も三色になっていますが、こちらの薄紅色は桃の花を表し、白は雪と白酒、薄緑色は草木の芽生えを表しているそうです。

江戸の頃より桜の名所隅田川を挟んで長命寺の桜餅が人気で、これに対抗して生まれたのが「言問団子」です。米粉の団子に小豆餡、白のこし餡を付けたものと、味噌餡をうぐい
す色の求肥で包んだもの。日暮里芋坂の串に刺した名物焼団子「羽二重団子」も有名です。酒の肴に売り出したのがはじまりとか。京都下賀茂神社の「みたらし団子」は砂糖醤油にくず餡をかけた小ぶりで団扇状に10本の串に5個ずつ刺して焼く団子です。厄除けの人形(ひとがた)を模したものといわれ、いろは歌留多にある「花より団子」は桜花爛漫の風情を楽しむより、団子を食べて花見気分を満喫することの例えで「名より実利をとる」ことをいい、「酒なくてなんのおのれが桜かな」も風流とはいえないようです。昔も今もやはり、夜桜には日本料理が似合います。

編集長 野澤 武

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