調理師日誌

2019年9月号編集後記

 落語の「目黒のさんま」に因んだ「目黒のさんま祭り」が今年も9月8日に巡ってまいります。目黒駅東口の商店街で行われ例年、3万人を超える人で賑わうそうです。さんまは岩手県宮古市から7千匹、すだちは徳島県から1万個、大根は栃木県那須塩原市から5百本、備長炭は和歌山県みなべ町から取り寄せて豪快に振る舞われます。早朝から参加者の行列ができ、待ち時間も最長5時間にもなるという。

 ところで肝心のサンマ漁は、去年の同じ時期の水揚げと比較して、今年は昨年の約1割しかないという前代未聞の不漁であると報道されています。水揚げが少ない上に漁場ははるか遠くの公海で、魚体も小さく三重苦の有様で関係者を大いに悩ませています。(一昔前は七輪の炭火で煙を立てて焼いたものである)

 焼きたての秋刀魚は柚子と大根おろしと醤油ではらわたの苦味と共に食べるのが一番です。今年は一般庶民の秋の味覚も奪われかねません。この際、さんま祭りに出向いて並んで待って食するだけの価値はありそうです。

 「秋刀魚が出るとあんまが引っ込む」という俗諺があるように栄養価の高い魚でもあります。「さんま苦いかしょっぱいか」サンマ漁の発祥の地「和歌山県」で育った佐藤春夫の名作「秋刀魚の歌」も思い浮かべる人はいない時代になりました。

 サンマに限らずスルメイカ、サケ、マサバ、カツオなどの主要魚種も軒並み不漁と伝えられており、10月からの消費税10%は軽減税率のややこしい問題もあり、飲食業界にとっては慣れるまで時間がかかりそうです。

編集長 富田正藤

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