調理師日誌

2019年7月号編集後記

 昨年12月に国際捕鯨委員会(IWC)を脱退した日本ではこのほど31年ぶりに商業捕鯨を再開しました。IWCは国際捕鯨取締条約に基づき鯨資源の保存及び捕鯨産業の秩序ある発展を図ることを目的として1948年設立され、日本は1951年に加入し、1986年に商業捕鯨を禁止されて以来、捕獲数を制限した年間596頭の調査捕鯨による捕獲活動を続けていました。

 今回の脱会により、7月から12月までの半年間はミンククジラ52頭、ニタリクジラ150頭、イワシクジラ25頭と設定されました。対象海域も我が国の領海及び排他的経済水域に限定され、南極海・南半球では調査捕鯨を含め捕獲は行わないことになっています。

 クジラといえば日本では明治時代までイサナ(勇魚)と称し魚として扱われ、セミクジラが珍重されて主産地の九州、四国、紀州地方では早くから食されていました。明治年間には京阪地方で鯨鍋として食べられるようになり、鯨肉と水菜のはりはり鍋は大阪の郷土料理にもなっています。黒皮のついたさらし鯨を食べていた関東で鯨鍋が食されるようになるのは大正末期頃といわれています。鯨の尾の付け根の霜降り肉(尾の身)は刺身にして最も美味な部分。尾羽は尾羽毛ともいいさらし鯨に用いられます。

 レバ刺しも出る都内の専門店「元祖くじら屋」は昭和25年から70年くじら料理をコースで提供しており、さらなる100年目を目指して商業捕鯨の再開を機に道玄坂に移転するようです。

 黒潮の騒ぐ匂ひや鯨追ふ(田中化生)

編集長 富田正藤

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