調理師日誌

2023年5月号編集後記

百花繚乱の風光る光景が風薫る青葉若葉の景色に変わる5月は、和製語のゴールデンウィーク(文字通りの黄金週間)で始まります。移動性高気圧のせいで陽気はすでに初夏となり、一年で最も爽やかで過ごしやすい季節です。

旧暦では梅雨時にあたり、5月の長雨を五月雨(さみだれ)といい、梅雨(つゆ)の晴れ間を五月晴れと称していたそうで、今では五月(さつき)の空の晴れわたる好天をさすようになっています。新緑が映える野山でのアウトドアーライフも盛んになりますが、五月晴れは秋晴れほどは続かず、4月下旬から5月半ば頃までの間となるようです。

八十八夜は立春から数えて八十八夜目のことで、農家では八十八夜の別れ霜を目安に、昔から霜の心配がなくなるので夏野菜などの農作業を始める習慣がありました。暦の上では5月の2、3日(今年は2日)頃がその日にあたり、今ではもっぱら新茶の季節の代名詞になっています。

宇治・静岡・狭山等の茶どころでは昔ながらの「赤ねダスキ(襷)に菅の笠」の茶摘み歌の風情は見られなくなり、摘み取り機の音と風景に変わりました。一芯双葉の新芽を摘み、一番茶の高級茶が玉露で、摘む前に若芽におおいをかける方法が用いられます。新茶は一般に5、60度のお湯で3分おいて飲み、二番茶以降の煎茶は7、80度のお湯で1、2分おいて飲むのがベターとされています。最近は深蒸し茶が喜ばれているようです。

もともと日本で茶の栽培が始まったのは栄西禅師が建久2年(1192)中国から茶種をもたらし、明恵上人が京都栂尾に茶樹を植えたのが宇治茶の起源と言われており、当時は不老長寿の貴重な薬として貴族や高僧が飲用していたと記されています。

連休明けの5月8日から、新型コロナも季節性インフルエンザと同等の五類扱いとなります。緑茶のカテキンは細菌やウイルスへの効能が認められていますので、茶腹も一時と言わず毎日大いに飲用しましょう。

編集長 日比野隆宏

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