調理師日誌

2022年5月号編集後記

青葉若葉のグラデーションが野山を彩る清清しい季節の到来と共に、4月29日(金)から5月6日(日)まで3年ぶりに”行動制限”がなく、人によっては8日までの最長10連休にもなるゴールデンウイークが始まりました。

海外旅行や国内旅行、アウトドアライフに一斉に羽を伸ばす人波の光景に目を奪われます。JTBの発表によると国内旅行人数は1,600万人で、感染拡大前の令和元年の2,401万人には及ばないもののこれほどまでにコロナ禍のストレスが溜まっていたということでしょうか。正直、新型コロナが収束したわけではありませんので、連休後の反動が気になるところです。

4月29日は昭和の日(昭和天皇の誕生日)ですが、かつて「天皇の料理番」として58年間大膳職の主厨長を務められた秋山徳蔵先生は「つくりたての食物を、すぐ召し上がっていただきたい」「どうしてもニッポンのご馳走を知ってほしい」との思いで、フランス料理の神様が60歳にして和食の修業をされたといわれています。

宮中では作りたての料理が陛下のもとに運ばれる間に冷めてしまうのを秋山先生は大変気にされており、昭和天皇の好物「てんぷら」の揚げたてを召し上がっていただくために、赤坂の「花むら」で深夜に修業され、またキビキビしたリズミカルな手つきで握り、さっと出す江戸前すしを召し上がっていただこうと銀座の「新富すし」で修業されたといいます。

別の書では「料理はたいてい熱い物がうまい。湯豆腐、鯛ちりなど、料理としてすこぶる簡単であるが、いつ食べても、またそんなによろしい材料を使わなくてもうまいのは、熱いところを鍋から口ヘすぐに持ってくるからである」とも語り、味の散歩を欠かさなかった偉大なる料理番の言葉として興味深いものがあります。

編集長 日比野隆宏

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