調理師日誌

2020年5月号編集後記

 青葉若葉の季節、一年で最も過ごしやすい時期の大型連休(飛び石8連休)が、今年に限っては新型コロナウイルス感染症のせいで、前代未開の外出自粛のしばりを受けてステイホームを余儀なくされた方が大半だと思います。本来ならばアウトドアライフを満喫する絶好のシーズンが、4月7日に国の「緊急事態宣言」が行われた時からすでにデパートや飲食店始め客商売の殆どが休業となり、自宅待機を強いられる方はまだしも解雇の憂き目に遭う従業員が続出し、風薫る爽やかな季節とは裏腹な気分に覆われています。出口の見えない不安感が解消される日が待たれます。

 治療薬もワクチンや特効薬がない中、海外で効果を上げているのが陽性で軽症者用の抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」(錠剤)や人工呼吸器使用の重症者用のエボラ出血熱に使われた「レムデシビル」(点滴)が注目され、いずれも厚労省では治験を兼ねた特例承認として急遽導入することになりました。副作用の心配もありますがその治療効果が大いに期待されるところです。

 端午(5月5日)の節句に因んだ食べ物のちまきは中国伝来のもので粽・茅巻とも書きますが、本来「茅」(ちがや)の葉で巻いたことに由来します。糯米や粳米、葛粉などで作った餅を長円錐形または三角に固めて笹や真菰などの葉で巻き、藺草で縛って蒸したものです。五月の献立によく用いられる関西風の粽ずしは、「永朋」6月号の献立担当者による10頁の前八寸や12頁、14頁、16頁のいずれも前菜の一品で扱われています。粽は柏餅などと共に初夏の季語で風物詩でもあります。古き良き時代の定番料理を季節の移ろいと共に提供できる日が一日も早く訪れることを日々願うばかりです。

編集長 日比野隆宏

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