調理師日誌

2025年11月号編集後記

「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに世界158か国が参加し、4月13日から大阪市の「夢洲(ゆめしま)で、6ヶ月間(184日間)開催されていた大阪・関西万博は開催前の予想を上回る盛況ぶりで2万5千人以上の入場者が訪れたそうで、10月13日に閉幕しました。

開催直後は海外パビリオンが未完成の国もあり、大会そのものの成果が危惧され、1970年の大阪万博のような全国的な盛り上がりには及ばないようでした。さすがに近畿圈での人気は圧倒的で外国人を含め、一部の予約券が無駄になり、会期の延長を口にする人も出るほどのミャクミャク万博でもありました。次の大型万博はサウジアラビアの首都リヤドで予定されていると報じられています。

日本人の今年のノーベル賞受賞者が決まり、話題になっています。一人は「医学・生理学賞」の坂口志文氏(大阪大特任教授)で制御性T細胞の発見が認められた米国の学者2人と3人の快挙でした。がん細胞を攻撃する際に正常な細胞も攻撃されてしまうのを制御するというがん治療にとって画期的な発見といわれています。

もう一人は「化学賞」の北川進氏(京大特別教授)で、豪州・米国の学者と3人の受賞です。金属有機構造体MOFの開発によるもの。生命・健康等の分野で応用が期待される多孔性材料のMOFは、例えば砂漠の空気から水分や二酸化炭素等の有毒ガスを集めて貯蔵に応用できるものであるといわれます。

いつの日か「平和賞」を求めてロシアとウクライナやイスラエルとハマスの戦争を終結させた暁にはトランプ大統領に朗報が届く日は来るのでしょうか。

朝夕に寒気を感じるこの頃、人里にクマの出没が多発し、人身被害が急増しています。呉々もご用心を。

編集長 野澤 武

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2025年10月号編集後記

最近の夏の猛暑は熱中症警戒アラートが絶えません。今年は特に40度を超える地域も多く、東京都の猛暑日は8月18日~27日まで10日間連続となり、これまでの年間記録23日を更新中で、9月になっても残暑は衰え知らずで続いています。秋の到来は遅れており、問題の多い新米もようやく出回り始めていますが、さすがに高嶺の花ならぬ高値の新米になっているようです。

実りの秋といわれるように、秋は米を始め多くの穀物や植物が実を結ぶ季節です。辞書によれば、特に稔りと書く場合は稲や穀物が成熟することを意味しており、年(ねん・とし)にも通じると記されています。また味覚の秋の言葉があるように、料理人にとっては旬の食材に困らない季節でもあります。

今月号の永朋の献立当番の表題を見ると「神無月の献立」が殆どでしたが、献立内容はさすがに豊富でイメージされる色彩も豊かでした。

ちなみに3年前の永朋十月号の献立の表題は「秋闌(あきたけなわ)」、「実りの秋」、「秋高し頃」、「晩秋の割烹」、「紅葉月の献立」となっていて「神無月」はありませんでした。陰暦十月の別称で「神なし月」「かみなづき」ともいわれます。俗に八百万の神々が、この月に出雲大社に集まり、他の国にいないゆえと考えられて来た。また、雷のない月の意とも、新穀により酒を醸す醸成月(かみなしづき)の意ともいわれる。また、「神在月」(かみありづき)は、出雲国で旧暦十月の異称。日本国中の神々が、この月、出雲大社に参集するとの俗信に基づくとあります。(「広辞苑」より)いずれにしても季語を主体とした献立の表題も熟慮してほしいと思います。

編集長 野澤 武

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2025年9月号編集後記

終戦から80年目の夏を迎え、終戦記念日に戦没者を追悼し平和を祈念する追悼式での天皇陛下のおことばは印象的でした。

「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。」と結ばれました。

参列した遺族の半数が戦後生まれとなり、戦争を知らない世代が年々増え続けている現状と向き合い、また世界唯一の被爆国として戦争の悲惨さを語り継いでいくことが平和への道筋になることでしょう。

終戦直後の食糧事情は、現代の飽食の時代からは想像も出来ない、食べるもののないまさに耐乏食というものであったと聞いています。昭和21年の東京における統計によると、一日三食を食べているのは会社の重役か医師だけで、サラリーマンは100人の内、12人位で、三食とも雑炊や代用食で凌いでおり、一日中代用食を食べるということは一粒の米も食べられなかったことになります。米を主食にできない当時の上等な代用食はすいとん(メリケン粉=小麦粉を水でこねた団子汁)。それ以下のものには糠団子や菜っ葉汁がありました。

社会問題となった今年の米問題は次年度から生産量を増やすという農水省の方針変更で一段落。もともと日本の主食の米は自給自足出来たのが明治30年頃までといわれ、戦前より朝鮮や台湾から20%も輸入に頼っており、大戦勃発によって輸入が止まり、敗戦による作物の大凶作が相まって、先の米不足による代用食となった過去の経緯を再認識しました。

記録的な猛暑の続く中、実りの秋も近づいてきました。豊かな食材を駆使し、味覚の秋にふさわしい献立作りを楽しみたいものです。

編集長 野澤 武

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2025年8月号編集後記

残暑・猛暑・豪雨のお見舞い申し上げます
編集部一同

土用丑の日の翌日(7月20日)、参議院選挙の投開票日となりますが、三連休の中日とあって期日前投票も多くなっているようです。本誌8月号が届く頃には選挙結果が判明していることになりますが、現状では昨年10月に誕生した石破政権の衆議院選挙結果同様、自公の過半数は困難とみられています。

自民、立憲、公明、維新、共産、国民、れいわ、参政、社民、保守の各党が鎬(しのぎ)を削り、物価高対策や消費税減税、社会保障、外国人政策等が争点となっています。とりわけ、街頭演説もさることながらSNSやインターネット上の動画での主張で支持者を拡大している「日本人ファースト」の参政党が比例区の台風の目となっているようです。

大阪・関西万博も3ヶ月を経過して折り返し、入場者数も順調のようです。小中学校が夏休みともなれば全国からのさらなる人出が予想されます。相変わらず外国人旅行客が増える一方ですが、一時、人気漫画の予言「七月五日の災難」が海外にも波及し、香港からの訪
日旅行者が前年より11%も減少したといわれています。「日本列島の南に位置する太平洋の水が盛り上がる」と言うデマでしたが、折しも鹿児島県のトカラ列島で頻発している地震にかこつけるのは的外れも甚だしい限りです。

残暑とは言え、先月号の編集後記のとおり、気候変動による猛暑とゲリラ雷雨に台風が加わわれば、防災グッズの用意が必要になるかもしれません。各自の職場では夏場の食中毒にも十分に注意しましょう。

編集長 野澤 武

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2025年7月号編集後記

みずみずしい稲穂のことを瑞穂といいますが、「瑞穂の国」といえば古来より日本国の美称とされてきました。ほかにも「大和の国」、日出る「日の本の国」などの美称があります。とりわけ「瑞穂の国」に象徴されるように、日本の気候風土に適した「稲作」を中心
に農業が営まれ、米が日本人の主食となってきました。

平成25年(2013)にユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」は正しく米飯を中心とした日本食になります。

昨年来、深刻な米不足による価格高騰の話題が絶えない中、江藤拓農水大臣が「私は米を買ったことがありません。支援者の方々がたくさん米を下さり、家の食品庫には売るほどあります」と失言したことで即更迭され、まさに新米の農水大臣に小泉進次郎氏が抜擢
されました。就任するやいなや、政府備蓄米を30万トン放出し、5月に前倒しして5キロ2,000円で大手スーパーと契約し、即時完売になるなど、話題沸騰になりました。早速メディアでは備蓄米を「小泉米」と称し、古古米、古古古米、古古古古米を順次放出することを宣言。コンビニなどでは小分けした1キロ400円の備蓄米も販売されています。

本来、政府備蓄米とは凶作や不作時の流通安定のために、日本国政府が食糧備蓄として保存してある物です。小泉大臣のコメントでは、これからもコメ価格の高騰を安定化させるため、随意契約による備蓄米の放出を決めており、足りなければ輸入することもあるとまで発言し、従来のお米屋さんからは通常価格の米が売れなくなると顰蹙を買っているようです。

梅雨明けの待たれる季節。気候変動によるゲリラ豪雨や異常高温による熱中症警戒アラートには十分に気をつけたいものです。今年の土用丑の日は19日です。鰻を食べて猛暑を乗り切りましょう。

編集長 野澤 武

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