調理師日誌

2023年10月号編集後記

「暑さ寒さも彼岸まで」といわれますが、昔から雑節の一つで、彼岸とは春分の日と秋分の日を中日とする7日間をいいます。夏の暑さも冬の寒さも彼岸を境にしてほどよい気候になることを表しています。

本来の彼岸(ひがん)とは事典によると、仏教の教えで人が生死の海を渡って向こう側の岸に到達する悟りや終局、理想の世界のことをいい、俗に“あの世”のこと。また逆に、悩みや迷いに満ちた現実世界は此岸(しがん)といい、“この世”のこととあります。年中行事では彼岸会(ひがんえ)と称する仏事があり、先祖を供養するために墓参りをします。季語では単に“彼岸”といえば春のお彼岸のことで、秋のお彼岸は“秋彼岸”というそうです。

今年の夏は観測史上最も暑い夏となりました。9月27日付の新聞では東京・大阪で真夏日が89日、福岡で88日、名古屋では90日を数えています。全国的にも7~8月の平均気温が高く、猛暑による家畜の大量死が問題となりました。秋田県の比内地鶏が2,500羽、山形県では鶏が6,900羽、牛は103頭、豚は100頭も死んでおり、飼育する農家では甚大な被害を受け
ています。当然ながら農作物への影響が大きく、葉物野菜や果物にも被害が出ており、これから出回る新米の品質にも影響があると思われます。

相変わらず中国の偏見による日本の海産物の輸入差し止めは続いていますが、地球温暖化に起因する海水温の上昇によって、北海道ではサンマやスルメイカの漁場が遠のき、食べ付けないフグが獲れたり、鮭の代わりにブリの豊漁が続くなど、日本近海の生態系が少しずつ狂い出しています。

魚の生育には植物プランクトンが不可欠で、海水温の上昇ですでに南から北ヘプランクトンが移動していると言われ、今後は陸上養殖などの開発が進むと共に、日本人の食生活も変化に対応していく必要があるようです。

編集長 野澤 武

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